雨宿りの木
□マッチ売りの少女
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寒空のなかマッチ売りの少女はなんの変哲もないマッチを売っていました。
その日はあまりにも寒かったので、売れないマッチで小さな火を灯しました。
するとその中に美味しそうな食事、かわいくて新しい洋服、そして今とは全然違う家族の笑顔があります。少女は手を伸ばします。
でも、小さな火はすぐ消えてしまいます。
少女は思いました。
―もっとこの火を大きくすれば、手が届く―
少女はたくさんのマッチを持って自分の家に向かいました。
そして持っていた有りったけのマッチで家に火を灯しました。火はあっという間に家を包み大きく燃えました。
少女には、家族の叫び声が、嬉しそうに微笑みを交わしているように聞こえました。
「暖かいね。待ってて、今行くよ。」
そう言うと、少女は燃え盛る家のなかに入って行きました。
朝になりました。少女の家は燃え尽きてしまいました。
ただ、少女であった真っ黒なそれは幸せそうに家であった場所に立っていましたとさ。