Long Story

□敢闘、その後
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一蹴して、ぷいっと顔を背けるシエル。我ながら子供じみた行動だと思ったが、すでにやってしまったのだから仕方ない。せめてこれ以上余計な事を言われないよう、目を合わせないようにし続ける。
セバスチャンは顔を背けたままのシエルに近付き、その斜め後ろに立って、しばし様子を窺うように沈黙していたが、やがて主人のご機嫌取りは諦めたのか普段通りの口調で声を掛けて来た。

「さて、まずは坊ちゃんが傷めているその足を医者に看てもらわなくてはなりませんね。この客船にも、船医が乗っている事でしょう。もっとも、この混乱した船上では、坊ちゃんのような軽度の怪我では後回しにされてしまうかもしれませんが…」

最後の方は微妙に苦々しさを交えた声音になっていく。それも仕方がない、とシエルは納得していた。先ほど船員が走り回っているのを見たとおり、ここには重軽傷を問わず、怪我を負った避難者達がたくさん居る。自分一人を優先させたいなどとは、微塵も思っていなかった。それよりも、今のシエルには気掛かりが一つ残っている。
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