Long Story

□敢闘、その後
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そちらに、意識と興味を向ける。
水や毛布、食べ物を配り回っている者や傷の手当てをするべく包帯や消毒液を持って駆け回る者。
はたまた、紙とペンを手に人々に声を掛けて回っている者達は、何やら情報収集をしている様子だった。
とにかく大戦場の如く、人と声とが入り乱れているこの光景の凄まじさは、シエルの口には表現し難いくらいのものであった。
カンパニア号内で起こった怒号と悲鳴には比べるべくも無いだろうが、今もまだ悲劇は終わっていないのだと、錯覚させるくらいに。

ーーいや、まだこの事件は、終わってなどいないんだ。

シエルは、自分の認識を改め直した。
救助船を目にした時から、ほっとするような安堵の気持ちが少なからずシエルの胸にも浮かんでいたが、そんな気持ちはことごとく否定しなければならないのだと、自分を律した。
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