マギ長編
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「人前に出るのを極度に恐れるお前が何しに来た?サブマドに言われて...って、ワケじゃあないんだろう?」
後ろにモルジアナもついて来ていた
「安心しろ、話し合いの場を設けるさ!身の安全も保障してやる」
「ぅ...うん...でも僕は、謝らなきゃいけない...おじさんの命を危険にさらしたことを...」
「ふうん...なるほどそうだったのか」
いや何がなるほど?
勝手に話が進んでるけど...って、ああ!!もしかして!?
「あれほどの情報を握っているなんて、かなり中枢の人間だとは思っていたが...お前だったなら納得がいくな!」
「「「???」」」
「つまり霧の団に国軍の情報を流していたのも、オレが霧の団を狙ってたことをリークしたのも、全部お前だったってワケだな...?」
「...」
「サブマド!!」
やっぱりか...
周りにいた奴らは、シンの言っていることに驚きを隠せない
そりゃそうだろう、敵である副王が情報提供者だったなんて...衝撃事実だしな...
騒ぎが静まった頃、サブマドがぽつぽつと話し始めた
サブマドが霧の団に情報を流してたのは、アリババが霧の団にいたかららしい
この荒れ果てた情勢も、アリババなら何とかしてくれると思ったから...
アリババに兄であるアブマドを止めた欲しかったからと...
『でもそれなら、お前が止めればよかったんじゃねーの?兄さんなんだろ?』
「そ、それは...」
「確かにな...お前が、賊に手を貸してまで!お前はアブマドの何をそんなに恐れているんだ!?」
「...恐れる......?」
びくびくしているコイツを責めるのもアレなんだけど、事実を知らないとこっちもどうしようもないからな...
「そ、そうだね...僕は兄さんが怖いよ...でも、本当に怖いのは兄さんがやろうとしていることなんだ」
やろうとしていること?なんだそれは?
「い、いや...そうなのかな?とにかく、この国に恐ろしいことが起きてはいるんだけど...い、一体なんでこんなことになったのか...よくわからないことが一番怖いんだ...!」
「サブマド...」
震えすぎて今にも倒れそうなサブマド
それを見かねて、バルカークが続けて話してくれることになった
この国の異変が起き始めたのは、先王が病に伏した頃からだったそうだ
王宮に「銀行屋」のマルッキオと名乗る謎の男が来た
各国を渡り歩き、財政顧問を請け負っていると言い、上手くアブマドに取り入ってきたのだ
当時パルテピアとの貿易が滞り、経済状況が下降の一途を辿っていたバルバッドは、他国の財政の立て直しの実績があるという彼の提案に乗ることにしたと...
そこで登場したのが「煌」(ファン)と呼ばれる紙幣だ
それは、確かに煌帝国の近隣諸国との貿易に恐るべき力を発揮した
紙キレが、様々な高価な金品・工芸品・調度品・特産物などに変わった
そしてバルバッドは、その素晴らしさに驚き、紙幣「煌」を使うことに決めたのだと
最初は上手くいったように見えた「煌」という紙幣だったが...
「煌」の価値は細かく変動していたらしい
昨日まで1「煌」だったものが、突然2「煌」になったりと...そのたびにバルバッドは大きな被害を受けた
そういうワケで、バルバッドの借入金額はいつの間にか膨大な額に膨れ上がり
それに伴い、僅かだった利子の返済に苦しむまでになった
丁度その頃「霧の団」騒動が起き、軍事費も嵩んでいき
借金をするために借金をするようになっていき、マルッキオもただでは貸してくれなくなっていった
担保として、海洋権・制空権・国土の利権・通商権が差し押さえられた
しかしバルバッドの政治を担当する王族や貴族や官僚たちに危機感はほとんどなかった
なぜなら国の借金によって、自分たちの生活水準は保っていたからだ
一般国民たちは、高い税金と社会保障の壊滅によって苦しんでいるにも関わらず
そしてついに、担保に入れられる資産がなくなった時
バルバッド王はこう言った
「次の担保は国民である。この国にはまだ予の国民がこーんなに余っているではないか!通商権の次は、国民の人権を担保に入れるのだ!」と...
「おい...国民の人権を担保ってどういうことだよ...!」
「兄さんは...国民を売ろうとしているんだよ...!バルバッド国民を...煌や、レームや、パルテビアに...労働という資本として...!」
なんつーことだ...
自分の国の国民を奴隷にするなんて...
頭イカれてやがるよ...!!
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