冬の海水浴

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 黄瀬SIDE







気が付いたら視界にはいつもいた


今までスポーツなんて、1回見たりしただけで完璧にコピーできて"楽しい"とかいう感情は沸いてこなかった

ていうか正直本気でやるやつらの気持ちがわかんなかったくらい

でも中学2年

たまたま覗いた講堂で全部変わることになる

今まで見たことないプレーで、目が離せなくて、

これが青峰っちとの出逢い


ただ胸が熱くなって即効入部届けを出した

んで自分で言うのもあれだけど、当たり前のごとく一軍になる


一目惚れ


女子なんて勝手に寄ってくるし、ドラマとかの中だけだと思ってた

でも青峰っちと笑顔で話す蒼空っちを見て異常に胸がうるさくなったの今でも覚えてる

初めての経験

けどそんな自覚と同時に、蒼空っちの表情で、蒼空っちは青峰っちに惚れてて、青峰っちも蒼空っちに惚れてて、想いあってるんだってことも一瞬で分かった

生まれて初めて実感したこの感情に、生まれて初めて泣きそうになる

ほんの短い時間だったと思うけど、俺にとってはものすごく長く感じた数分


そりゃ顔は文句なしに俺の好みってこともあった

けど、認めたくはないけど青峰っちに見せるホントに幸せそうな笑顔を不覚にも俺にだけ見せてほしいなんて考えた俺

ほかのやつに見せてる笑顔で惚れたとかおかしい話かもしれないけど事実なんだからしょうがない


幸せそうに話して、笑いあってる2人を見てると、邪魔はしたくなかった

たしかに蒼空っちが俺を好きになってくれたらとか彼女になってくれたらとか思うことはたくさんある

けどそれ以上に、俺が矛盾にも大好きでたまらない笑顔を見られなくなる方が嫌だから



そんなある日

青峰っちに彼女ができた

思わず息の抜けたみたいな声が出る

開いた口が塞がらないってあのことだ、なんて今は考えれるけどあの時はそんな余裕塵一つもなかった

目の前の青峰っちと可愛いなんて俺には全く思えないその彼女、それを見て涙を目一杯に溜めながらも無理矢理笑おうとしてる蒼空っちを見て頭には疑問と怒りしか浮かばなかったから


俺の目の前の蒼空っちは俺が見たくて、大好きな笑顔を浮かべてなんていなくて、

それどころか俺が1番見たくなかった涙を浮かべてる

吹雪の中に放り出されたみたいに突然頭が冷えてクリアになる頭

ただ1つの言葉だけが頭に浮かんだ



 蒼空っちのあの笑顔はもう見れない



そう考えたらもうスッキリした

青峰っちが誰かと付き合う度に蒼空っちはあの表情を浮かべて、その表情を見る度に青峰っちがまだ好きなんだって俺は実感

でも俺のことも見てほしくて、アタックしまくった

たくさん話しかけて、たくさんいろんな俺を見せたり


1つ疑問がある

青峰っちは蒼空っちがまだ好きだ

だって蒼空っちと話してるとき、ほかのやつらに見せない、優しそうな笑顔を浮かべるのは変わってないから

これだけは分からない


蒼空っちが好きならなんでほかの女子と付き合ってる?

蒼空っち以外と付き合ってなんのメリットがある?

分からない分からない分からない

数ヶ月たった今でも未だに分からない




そんなある日

蒼空っちが休憩のとき、俺のところに1番に持ってきてくれた

いつもは青峰っちが1番でほぼ約束みたいなもの

けれどあの笑顔を浮かべて俺のところに来てくれた蒼空っち

正直笑顔しかでてこない

蒼空っちが俺の髪に触れたときはなんだか今までの疑問とか全部が吹っ飛んだみたいだった


次の瞬間体育館の扉が勢いよく開いた

そっちを見れば青峰っち

理由はなんだかすぐに分かったから、腕と膝が俺を笑う

追いかけようとした桃っち

俺が止めれば、明らか瞳が揺れた

その瞳を見て気付く


あぁ、みんな分かってたんスか


俺は一息ついてから蒼空っちに声をかける

青峰っちを追いかければ、すべてが変わるのはもう分かってる、承知の上だ

まだ少し震える腕を押さえながら体育館を出た

























震えた世界


(俺はただあの笑顔の虜になっただけ)








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