冬の海水浴
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教室に戻った私は昼ご飯を食べながらさつきちゃんに涼太くんに助けられたこととそのお礼について話した
そしたら一瞬辛そうな顔をして、悲しそうに笑ったさつきちゃん
「……蒼空は大ちゃんに告白しないの?」
「!!うわっ、」
「あ、ごめん、大丈夫?!」
私は思わず卵焼きを落としそうになった
前を見ればいつも通り笑ってるさつきちゃん
見間違い、だったのかな……?
「それで、しないの?」
「………しないよ!だって大輝くん彼女いるじゃん!それで私が告白なんてしたらどんだけ嫌な女なの」
「でも大ちゃんは………、…やっぱりなんでもない!あ、そうだ、これ大ちゃんに渡してきてくれないかな?大ちゃんのお母さんに頼まれてるの」
「え、部活の時でもいいんじゃ、」
「いいから、いいから!たぶん屋上だと思うからよろしくね!」
「ちょっ……!」
背中を押されて無理矢理手に荷物を持たされる
そのまま出入り口まで連れて行かれて、私が出た瞬間無情にも扉は閉められた
もう行くしかないじゃないか。まだお弁当、途中だったんだけどな…
私は一つため息をついてから教室からの笑い声とかをBGMに、屋上に向かった
「あ、寝てる」
私が屋上の扉を開けると、あまり広くない屋上の真ん中で寝てる大輝くん
傍には私が朝渡した、空っぽになったお弁当箱
食べてくれたんだな、って考えると、なんだか嬉しくなった
寝てる大輝くんの近くに寄って、しゃがみこむ
このまま置いていっちゃ、分かんないだろうしどうしよう
起こしちゃってもいいのかな
大輝くんの目の上辺りで手を動かしてみるけど反応なし
……どうしよう
「蒼空、……?」
「あ、大輝くん!起きた?」
「ん?おぉ……。なんでここにいんだ?」
「さつきちゃんがこれ持って行って、言うから持ってきたんだけど、」
「……これ部活のTシャツとかじゃねーか。いまいらねーだろ」
「それ私に言われても困るよ、さつきちゃんが今って……」
「…………はぁ。とりあえずせんきゅ、助かったわ」
「いや全然いいよ、気にしないで!」
「ホント良い奴だな、お前」
「……そう、かな?」
全然良い奴なんかじゃないよ
大輝くんが彼女さんと歩いてると嫉妬で可笑しくなりそうだし、さつきちゃんにさえ嫉妬しちゃう嫌な女なんだよ
だから私は思ってもない嘘を吐く
「……大輝くんの彼女さんの方が良い子なんじゃないの?」
「ん?あー、そうか?今回の女はな、――…
嬉しそうに話す大輝くん
私のどこかがまた欠けた気がする
正直何も入ってこない
無音の世界に、目の前の大輝くんの嬉しそうな笑みだけがあった
「おい、蒼空!聞いてんのかー?」
「、聞いてるよ!ホントに、いい彼女さんなんだね」
「だろ?」
またはにかむ大輝くん
可笑しくなりそうな私をこらえて必死に笑顔をつくる
傷ついたのは数え切れない
きっと大輝くんが今まで付き合った数だけ傷付いた
大輝くんは悪くないのに
悪いのはこんな私なのに
勝手に大輝くんを好きになって、勝手に傷付いて
こんな私でごめんなさい
キーンコーンカーンコーン
「あ、チャイム鳴っちゃった…。早く戻ろう?」
「俺サボる」
「ちょ、ダメだよ……!」
「次蒼空んクラス、自習だろ?一緒にいてくれよ」
「え、?」
「話し相手いなかったら寂しいだろーが」
大輝くんは断れないことを知ってて私に言ってるのかな
私が小さく頷けば、満足したようにまた笑う君に、また私は堕ちていく
沈む世界(お願いだから)
(こんな私に期待させないで)