我流をゆく!

□ま
1ページ/2ページ







はてさて、これはどういう状況だろうか





「オホホホホ!うちのお料理は気に入って頂けたかしら?もう、お義父さんたら、お客様をお呼びするならきちんと連絡して頂かないと困りますわ!」

「それはすまんかったな、キキョウさん。次からは気をつけよう」

「あら!全然料理が減っていませんわ!!やっぱりお口に合わなかったのね!!今すぐシェフを呼んで作り替えさせますわ!ちょっと!シェフ!!!」

「あはは・・・いや、ただあんまり食欲がなくて」

「それは大変!!!!どこか体の調子が良くないのね!!ちょっと!ドクター!!!」





ジーザス

神なんか信じちゃいねェが、誰でもいいから助けてくれ



あれから、デカい仕事もなく、幻影旅団の小さい仕事についていきながら、俺も適当に暴れたりしてた

アジトにいたり、みんな各々の隠れ家に帰ったり、メンバーはそれぞれ

俺はアジトで留守番

避雷針の術で幻影旅団の皆と大きい街にマーキングさせてもらったから、いつでもどこでも行けるし生活にも娯楽にも困らねェ

この前適当にフェイタンの所に飛んでみたら、たまたま偶然拷問中だって見学させてもらえた

一番相手に苦痛を与える方法とかタイミングとかを知ってて、わりと有意義な時間を過ごせた気がする

次はぜひ最初から見学させてもらえるように頼んだことは記憶に新しい



こっちの世界じゃ、ハンターっていう一つの大きな組織があるらしく、そいつらにバレたら捕まえられるかもしれねェから前の世界みたく好き勝手できねェのだけが傷だけど

だから、シャルナークに頼んで教えてもらって、社会から消えてもいいっつーか消えた方がいい人間とか組織を消しまくってたら、いつの間にか俺は表の世界じゃ救世主なんて呼ばれてるらしい

なんて面白くねェ冗談だ

それを聞いた時、人間とち狂ってるって実感

もし実際消される側になったら、もし消された人間が有名人とか世にいう善人だったら、もし消されたのが家族だったら、愛する人だったら、

絶対俺は救世主なんて呼ばれねェだろう

ただ悪人ってだけで

ただ見知らぬ人間てだけで

嗚呼、やっぱり世界が変わっても人間は阿呆だ


ハンターってやつに追いかけられるのも一種の娯楽でいいかな、なんて言ってみたら、本当にめんどくさいことになるからやめてくれってシャルナークに半泣きで止められたのは記憶に新しい

その後に、俺なら本当にやりそうだって言われた

幻影旅団のメンバー全員に頷かれたのは解せない


少し前に、たしか危ない薬を売り捌いてるやつを消しに行った時、違うやつに雇われたっていう殺し屋に襲われた

一瞬でそいつも消したけど

もちろん雇い主のことを"覗く"のも忘れねェ

殺し屋っつったら前に会った綺麗な黒髪が俺の頭から離れねェから困る

惚れ惚れとするくらい綺麗な身体も、興奮させてくれるような冷たい殺気も身のこなしも、全部が違う

思わずため息を吐いたのは仕方ねェ

そんなことが何度かあって、そのことをマチと話してたら呆れながら教えてくれた

シャルナークが教えてくれる悪いやつらってのは、俺らでいうビンゴブックに載ってるやつらをランダムに教えてくれてるらしい

そんで、そこに載ってるやつらは次は自分なんじゃないかとハラハラしてるらしく、その前に俺を消そうとして殺し屋を送り込んできてるみたいだ

表の世界で救世主なんて呼ばれてる俺も、裏の世界で悪いことしてる奴らからしたらただの恐怖の存在でしかない

まあ当たり前だな



『やられることがないのは知ってるけど、アンタも人間で女なんだ。気をつけなよ?』



教えてくれたあと、呆れて目を細めながらこう言ってくれたマチ

我ながらマヌケな顔になった自信はある

けど、なんか胸あたりがむず痒くなって、俺の腕に収まるくらい小さいマチを抱きしめたら鳩尾を殴られた

わりと痛くて思わず変な声が出たけど、それでも腕は離さない

ふと見えたマチの耳が赤かったけど、俺の顔も同じくらい赤かったと思う

ホームの真ん中でこんなことをやってたから、隅の瓦礫でエロ本読んでたフィンクスに『昼間からイチャついてんじゃねえ!』って怒られた


消しに行くやつらも殺し屋も、多少楽しくさせてくれることはあっても、前の世界のやつらとか幻影旅団とかみたく興奮まではさせてくれるようなやつらはいねェ

けど、忍法以外にも俺の芸術を増やすために今の活動は続けてる

こっちの世界にある多種多様な能力は俺の想像を超えるものもあったりして楽しい

けど、使うやつら自体が強くねェから話にならん


そんなこんなで今日もまたそんな日常と同じように、せっせと芸術布教に出かけてた

シャルナークが教えてくれた屋敷に瞬身の術で移動して忍びこむ

こっちの世界じゃシュウっていうらしいけど、とりあえず探知を広げて屋敷の中の人数を調べた

一番マシなやつは屋敷の奥にいる

とりあえずそこまで行くことに

今日は暗部スタイルで行こうと思って、気配を消しながら音もなく人を消していく

こういう時にキルアにもらったあの形はつかえるな

まだ出した直後は動いてる心の臓をこの手に持つのは正直不快だけど、血を吹き出させず音もなく終わらせることができるのはいい

何人目かの胸を貫いた時、思わず動きが止まりそうなくらい鋭い殺気を感じた

反射的にその場を飛び退けば、そこには俺と同じように手を変形させてる爺さん


この俺があんな近くになるまで、気配も殺気も感じられなかった


久しぶりに身震いする

もし避けることが出来てなかったら、なんて俺の大嫌いな、たらればすら漏れそうになった

それくらいに久方ぶりの感覚

その時点で飛び退いてコンマ3秒

爺さんの視線が俺に向く

どうしようもなく興奮

鋭い殺気が俺を貫いたまま、爺さんは口を開いた





「はて、近頃凶悪犯を消して回っておるのはお主か?」

「いひひ、確信があったから俺を攻撃してきたくせによく言うよ」

「そうじゃな、身のこなしや技のキレという言葉だけで済ませていいものでもない天賦の才能。お主で間違いなさそうじゃ」

「・・・へェ、アンタがゾルディックのあの2人の爺さんかい。アンタの思った通りイルミくんがこの依頼じゃなくて良かったと思うよ、俺も」

「!!お主心が読めるのか、それよりも儂を知っておるのか」

「ぜーんぶ俺の能力さ!イルミくん、俺の実力を測った上で逃げちゃったけど、それでゾルディック家のほぼ実力ナンバーワンのアンタとやれるなんて俺は今有頂天だ、うん!」

「・・・本当に儂が来て良かったわい。ついこの前にイルミが話しておったのはお前のことじゃな」

「たぶんね。さて、俺を殺してみてくれよ、なァ、ゼノさん?」





あっちの世界でもこんなに興奮したことは片手ほどしかない気がする

リーダーの実力を垣間見た時、ナルトのこれからの可能性を感じた時、あとははてさていつだったかな

リーダー達が本当に俺を殺そうとする時に感じることはこんな感じかな


とりあえず影分身の術でもう1人俺を作って、ある所に向かわせてから、もう一度ゼノさんを見る

その瞬間に急激に距離を詰められて、体術でその攻撃をいなした


確実に一撃一撃、俺の急所を狙ってくる

俺がつられそうなほどフェイントも上手い

掠った一撃が、想像以上に重い

見たこともねェだろう忍術も冷静に見極めようとするのも見える

土遁で固めても、なにをしても動きを止められない

あっちにも着実にダメージは与えてるけどこちらも然り

龍の形を模したオーラで攻撃してくる

嗚呼、なんてうっとりしちまうくらい濃くてどす黒いチャクラなんだろう

チャクラの調節とか使い所も分かってる



少し距離を置いて、腹からせり上がってくる血反吐を吐き捨てる

同じようにゼノさんも、俺が外した肩を大きく回して、ごきんとはめてた

ここで目が合えば、俺の改めて見る瞳の変化に驚きつつ楽しそうに笑ってくれたゼノさん

どうしよう、目が合ったゼノさんの心を覗けば、ゼノさんも俺と同じように思ってくれてる

嬉しくて血が垂れる口端が上がったのが分かった

柄でもねェけど、





「初めて生きてるって心地がするよ」

「っはあ、奇遇じゃな、儂もじゃ。一撃一撃の時間がとてつもなく長く感じる、お主がそう思っておるのも感じたよ。心滴拳聴、お主やっぱり強いのう」

「久しぶりに殺すのは惜しいと思えたよ、うん。けどアンタは俺を殺す依頼がある」

「あぁ、そうじゃ」

「だから、その根源・・・、依頼主がいなくなればいい」





とてつもなく長い時間、攻めあっていた気がするけれど、実際は数分

ここでやっとゼノさんは俺の影分身ともう1人の気配に気がついて振り向いた


そこには今回莫大な金でゼノさんを雇ったこの屋敷の主

そいつは、チャクラ糸で拘束されて引き摺られながらここに来たみたいだ

喉を潰されたみたいで、汚い掠れた音しかでてない

涙とか鼻水とかいろんなモンが顔から吹き出てて美しくねェ

虚ろな目でゼノさんを見つけると、途端に目を輝かせて、鼻息荒く俺を睨みつけてきた

ほんと、人間て救いようがねェ





「!!分身か」

「さて、コイツはアンタを雇ったやつだよ。どうしてほしい?」

「お主を倒すのに、あんなお金じゃ割にあわねえ。それに、ここでお主を殺すのは惜しい」

「てことで、俺ちん優しいからゼノさんと会わせてくれたお礼に一瞬で逝かせてあげる。赤鬼さんによろしくな」





分身の俺が、ソイツの頭を一蹴りすれば簡単に首から上が吹っ飛んだ

それから分身を俺の中に戻してから、もう一度ゼノさんと向き合う

もう鋭い殺気はなかった





「お主、名前はなんというんじゃ」

「灘木憂輝っていうんだ、うん。・・・改めて、ゼノさん、よろしくな」

「早速じゃが憂輝、お主儂の養子にならんか?」

「・・・んん???」





造血丸が器官に入りかけて噎せた







次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ