あれから試合
最初こそ守りがものすごく固くて、点すら取りにいけなかったけど、テツのパス回しが本格的に始まりだして流れが少しずつこっちにきた
第一Qは同点
でも第二Qでまさかの大我が4ファウル取った
思わず叫んだし
アホ短気脳まで筋肉!
聞こえてたらしくて、お前にだけは言われたかねー!ってまた叫び返される
そこでテツと2人でチェンジ
あ、テツはファウルなんて取ってないよ?
真くんに勝つためらしい
たしかに今の攻撃の核はこの2人
ここで体力を使いきればここで勝てても真くんたちに勝てる確率は比じゃないくらいに低くなると思う
でもきっとそんなことは建前なのは見て分かった
だって私が抜ける前の全中で先輩も同じような表情をしてたから
『先輩にちょっとくらい華持たしてよね!』
いい先輩だった
そんなこんなで、順平先輩はクラッチになって、水戸部先輩はフックシューターだったこと、俊先輩がイーグルアイを持ってたこと、土田先輩はリバウンドが得意なこと、小金井先輩はたぶんムードメーカーなことが判明
イーグルアイ羨ましい
先輩方の試合を見るのは初めてで、なんだかしっくりきた
だってたぶん1年間かけて築いてきたものだろう
横で自分が抜けたことに対して心配してた大我に自意識過剰って言っておいた
隣の隣とかのほかの1年ズからも賛同の声
なぜか寛くんだけが腕で首しめられてた。可哀想に
そんなことをしながら試合を見てると、出そうだったボールを全力で小金井先輩が追いかけて私たちのほうに駆け出してきた
なんとかボールはエリア内に入れたんだけど、勢いが止まらなくてそのまま……………え?
テツと大我が私を呼んだ気がした
「黒子ぉぉぉぉおおおお!!!!!」
「たい、が、?」
ものすごく重い身体
大我のテツを呼ぶ声が鮮明に聞こえて、無理矢理身体を起き上がらせる
どうやら大我に膝枕されてたらしい
なんて硬い膝枕だ
太我の視線を辿ってコートに目を向ければ、順平先輩がシュートを綺麗に決めたところだった
その瞬間に鳴る試合終了の合図
え、
「!だ、大丈夫かよ、楓!!!?」
「え、私なんで寝てたの?あれ?私居眠りしてた?」
「楓!!!ほんとにごめん、楓!!!大丈夫か!!!!?」
「あのね、楓、小金井くんがつっこんできたところまでは覚えてる?そのままジャストミートに楓に当たって、2人一緒に失神ってわけ!………でも今はそれどころじゃないの、わたしたち勝ったのよ!!!!!正邦に!!」
「え、あ、え?やっ、やった!!!!!」
「っなんでだよ!!!」
「!!」
「誠凛なんて去年できたばっかのとこだろ!!!?練習だって絶対ウチのほうがしてる!!去年なんて相手になんなかったのに!!!強いのはどう考えてもウ
「やめろ津川」
だってッ…………!」
「強い方が勝つんじゃねえ、勝った方が強いんだ」
「せん、ぱい…」
「そーゆーこと!さ、整列行こーぜ」
「誠凛の方が強かった、それだけだ」
「………ッ名前!!!」
「は?」
「お前の名前だ!!!!」
「…黒子テツヤです」
「……覚えとく!!」
審判の声で、もう一度ウチの勝利が告げられる
その瞬間にまた喜びが湧いてきて、近くにいたリコ先輩と手を取り合った
喜びすぎた大我に赤ちゃんによくやる高い高いをされて、そしたら観客席から警備員さんの止める声が聞こえたけど私は絶対振り向かない
下ろしてもらえば、次は誠凛の皆からのタックル
苦しすぎた
けどそれは決して逃げたいと思うようなものじゃない
汗の臭いがした
「楓、大丈夫でしたか?病院に行きますか?僕心配で心配で、津川くんに八つ当たりしそうで、」
「津川くん生きててよかった」
「でも、僕の活躍を見られてないのは残念です。ぜひ見てほしかった」
「楓、ほんとに大丈夫か?」
「せ、先輩方!!!!」
「どうした、楓?」
「っおめでとうございます、私嬉しすぎて!!!」
「ちょ、泣くな泣くな!ほ、ほら、泣いたら…………なんで今に限って舞い降りてこないんだ、ダジャレの神様!!!!」
「ほら、水戸部!いないいないばぁだ!」
「!…」
「水戸部くんほんとにしなくていいから!!?」
「楓、」
「じゅんぺ、せんぱい!」
「泣くのは早いだろダァホ。緑間倒すまで残しとけ」
「は、はいっ!」
「さすがに日向くん、どっかのだれかさんとは言うことが違うわね」
「え、俺のこと?俺のことなの?」
「さっ!すぐ休憩よ!各自ボトルとかだけ持って控え室行ってエネルギー補給!」
「スルーしないで!!?」
「楓、ちょっと頼んでもいい?フラフラとかするんだったら断ってくれていいわよ」
「いや、大丈夫です!どうすればいいんですか?」
「会場出たところに自動販売機あるでしょ?その隣に製氷機あるからそこで氷と、近くに購買みたいなもころであったらバナナ買ってきてほしいの。どっかの誰かさん用とどっかの誰かさんパート2が忘れちゃったのよ」
「ほっほんとにごめんな、楓……!」
「私は大丈夫です、小金井先輩こそ大丈夫ですか?」
「おう…!!」
「じゃあ行ってきますね」
「ありがとうね、楓」
関係者用出入口から出て、一般の棟に向かう
元々場所は知ってたからすぐに自動販売機には着いて、氷は重いから先に購買を見ることにした
やっぱりさすがにバナナは………………、ってあるのかよ
1本入りしかないけどいいよね?
おばちゃんにバナナを手渡して購入
それから製氷機に
ボタンを押して、袋に適当に入れる
縛らなきゃダメなの忘れてた
ちょっと多かったかな
無理矢理縛れば、袋はパンパンになった
……ま、少ないよりはいっか
隣の自動販売機を見れば、よくCMでやってる新しいジュース
探してたのに全部売り切れとかで初めて売ってるのを見つけた
え、買おうかな。いや早く帰らないとな
どうしよう
そしたら後ろでなにかが落ちる音がした
なんだか直感で振り向きたくないけど、名前を呼ばれたから振り向く
「楓さんっ!!?え、あ、俺、10m範囲、あ!」
「幸男先輩ですかその喋り方。ていうか試合と別人すぎです」
「男子の名前!?いや、楓さんだから当たり前か……!」
「もう意味が分からないです」
「あの、俺が嫌いなら聞くだけでいいんで聞いてくれませんか」
「……敬語なんてやめてください、同い年なんですから」
「!お、は、おう!…最初もたしか自動販売機の前だったよな、あはは。そっそんで俺楓さんにひどいこと言って、俺あんなはっきり言ってくれたことなんてなくて」
「うん、」
「そんで帰って楓さんのでてる試合とかいっぱい動画サイトで見て、全部違うんだなって考え直したんだ。プレーのキレもテクニックもスピードも、全部すごかった。俺ほんとに魅入って、余計好きになりました。許してもらえるとは考えてねーけどほんとにごめん。全部撤回する。楓さんは天才だ」
「津川くん………。あの、私そこまで言ってほしかったわけじゃなくて、あの、あれ?とっとりあえず、私の才能を認めてほしかったんじゃないよ、私は姉さんを話に出されたことと疚しいことして私がキャプテンになったって思われてたことに対して怒っただけだから」
「…本当にすみませんでしたッ!!」
「あっ頭あげてよ、津川くん」
「でも、俺、」
「分かってくれたんなら、私は大丈夫、怒ってなんかないよ」
「楓さん…!!!!!やっぱり好きです!!!!踏んでくださ ひう!!!!!」
「え?ペットボトル?飛んで。え?」
お辞儀しようとした津川くんの顔面に私の後ろから飛んできたペットボトルがジャストミートに当たった
屈みこむ津川くんに、思わず振り向く
そこには歩いてくる幸男先輩とその後ろから涼くん
幸男先輩は笑顔だ、ものすごく
こちらに歩いてきて、私の足元にまで跳ね返ってきたペットボトルを拾い上げた
もしかして幸男先輩が投げたの?え?は?
「幸男先輩、?」
「どっどうした、楓?」
「楓ー!!!やっぱ誠凛勝ったッスね、さすが黒子っち達ッス!!」
「ペットボトル投げたのって、」
「楓、早く行かねーと、かっかか監督に怒られんじゃねーか?」
「!!あ、忘れてました!!!」
「ッあ、楓さん、待ってください!!」
「津川くん?」
「俺半径10mに入れなくてもいいです、叫んででも話します!!だっだから友達になってくださ いあっ!!!」
次は2つのペットボトルが津川くんの顔面に直撃してました
弾丸はプラスチック
(ペットボトルってあんなに威力出せるんだ)