ただ手を伸ばす
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「っ!!」
「楓、お前、もしかして、」
私が3Pラインからボールを放つ
真くんみたいに綺麗には入らないけど、落ちることなく無事にゴールをくぐり抜けた
よかった、本格的にはまだ腕は落ちてないみたいだ
それをベンチで見てた先輩が持ってきたコーラを飲みながら私に声をかける
次に言う言葉は簡単に読めた
それを承知で来てもらった筈なのに、心が痛い
「帝光中女子バスケ部部長、1年ながらにして部長を任されてソイツが2年の全中の直後に急に消えたっていう、全中優勝まで導いたキャプテン、桃井楓…?」
「…たしかに中学時代は帝光でキャプテンを任されてました」
「っあのか!!どっかで見たことあんなとは思ってたんだ!」
「私は、」
「え?」
「!いえなんにもありません。話の続きですよね、すみません。久しぶりにボールに触りたくなったんです」
「あぁ。今度楓が全快の時に1on1でもやるか!」
「もちろんです!」
先輩の隣にまた座る
タオルでほんのりとかいた汗を拭いて、ボールを膝の上に置いた
「私と、青峰くんは幼馴染みです。青峰くんのプレーが大好きで、憧れてました。自分で言うのもおかしいかもしれませんが私は自分に自信がありません、それで先輩が言う私が中2の全中が終わったあとに…ちょっとした出来事があってバスケから逃げました。その時私はなにも言わずに逃げたんです、みんなから。…それだけです」
「だから青峰とマネージャーはあんなに驚いてたのか?」
「、はい」
「言う気はねーのか?」
「どうすればいいか、まだ私の中で決まってないし、分かってないんです。だから、」
「ほかの奴には言わねーよ」
「ありがとうございます」
「いまはバスケ、好きなんだろ?」
「はい!!やっぱり、これだけは捨てれないんです!!」
「ならよかったぜ!俺でよかったらまた話聞くからなんでも言えよな?あと言ってくれてせんきゅ」
「高校生になって、これを話したのは先輩が初めてです」
「俺でよかったのかよ?」
「先輩だから話したんですよ!わざわざ私なんかのために部活が終わって疲れてるのにありがとうございました」
「気にすんな、俺が気になって聞きに来たんだからよ」
「っはい!」
「つかホントに大丈夫か?顔赤いぞ?」
「ちょっと頭がクラクラするだけなんで大丈夫です」
「大丈夫じゃねーだろ、それ!?送るから乗れって」
「…それはまさかのおんぶってやつですか?」
「歩いて帰って倒れられた方が困んだよ!マンガみてーに横抱きはできねーけどな」
「そんなの私恥ずかしくて死にますからお姫様だっこなんて無理です!!!」
「じゃあ分かったから早く乗れって、汗かいてんだから身体冷やすぞ」
「…重くてごめんなさい」
「全然大丈夫だっての、男なめんな!…っしょと、」
「!わっ」
先輩が私を背中に乗せて立ち上がる
家に帰る道を私に聞かないでも普通に覚えてるのか進んでいくから、記憶力いいなぁって考えた
あぁ、羨ましいなぁ
先輩の汗と、柔軟剤とかの匂いがする
単純に、嫌いな匂いじゃない
なんだか落ち着く
「重くないですか?大丈夫ですか?明日筋肉痛になりませんか?」
「大丈夫だっつってんだろ、つか楓は自分の心配しろっての。すんげー身体熱いぜ、楓」
「そうですかね?」
「気づけ。つか誠凛は予選どうなんだよ?」
「快勝だったらしいです!」
「俺は楓が太鼓判押してたチームとどうせなら試合してー。だから途中で負けてたりしたら許さねーからな」
「こっちのセリフですから」
「…楓、お前は青峰のプレーが好きだってさっき言ったよな」
「はい」
「アイツな、練習してねーんだ」
「、え?」
「試合も遅れてくるし、酷いときはサボるときだってある。お前が見てたときは、輝いてたのか、アイツは?」
「…バスケが好きで好きで、それしか考えてないような人でした」
「そうか。……ほら着いたぞ、ちゃんと休めよな」
「はい!ありがとうございました」
「おー」
「…っ先輩!!」
「あ?」
「つっ次は来る前、ちゃんと連絡ください!!準備してますから!」
「!おぉ、おやすみ」
「おやすみなさい!」
掴みとるよ
(期待、してもいいのか、俺……?)