ただ手を伸ばす

□紫
1ページ/1ページ








 紫原SIDE






なーんにもないある日

ただ授業がダルくなってサボることにした

まぁ先生休みで自習だし大丈夫だろ

校舎歩いててバレて怒られるのは嫌だから、前赤ちんにもらった屋上の鍵を使うことにする

1時間くらい屋上いてもバレないだろうし

ちょうど屋上行く階段の近くだし


そんで階段上ってって、屋上の扉の前につく

赤ちんからもらった鍵どこやったかなー

たしかこのポケットに……





「あ、敦くんだ!」

「ん?楓ちんじゃん。楓ちんもサボり?」

「うん、数学分かんないから保健室って言って抜けてきた!」

「だからバカなんじゃねーの?」

「…さぁ鍵はどこかなー」

「スルーかよ。つか鍵あんの?」

「私を舐めてもらっちゃ困るよ!…はい、スペアキー!」

「自前ー?」

「大輝くんにもらったー」

「あぁ、峰ちんね」





マネージャーのさっちんの双子の妹で、女子バスケの部長をやってる楓ちん

実力は本物

そりゃ努力もしたかもしんないけど、それ以上に運動神経が神がかってる

楓ちんはそれを自慢するわけでもないし、鼻にかけるわけでもない

ただ前を向いてるだけ

俺的になんだか新鮮だった

バスケしてるときはすごく真剣な表情してる

けどバカだし、よく笑ってるしまるで別人みたい

あとお菓子くれるしいい奴

よくこうやって一緒にサボったりするサボり仲間

だから一緒に先生の説教うけたりもする

悪友?って呼べるものなのかは分からないけどそんな関係

とりあえず、一緒にいて苦ではない


今だって、屋上に一緒にいれることに喜んでる俺がいるし

先に屋上に入って、盛大に寝転んだ楓ちん

一応俺男なんだけど?

俺も楓ちんの近くに座り込む





「無風だねー」

「ホントそれ。屋上っていつも風がびゅんびゅんのイメージなんだけど」

「分かる!あ、お菓子持ってきたけど食べる?」

「なんの?」

「私の大好きなシリアルのチョココーティングと新発売のチョコホールのいちごみるくあ「食べる」もう食べてるじゃん!私のチョコホール!!!」

「あ、これ結構いける」

「ぐっ、隙あり!」

「俺のまいう棒!!」

「ふむふむ、これはコンポタ味だね?」

「くっそ!」

「やり返しだ!」





こんなやりとりが日常

楓ちんもお菓子が好きだから、交換しあったり今みたいに取り合ったり

でも心の底から嫌だと思わないのはきっと楓ちんだから

最近俺はおかしいみたいだ





「あー、また部活帰りに駄菓子屋寄らないといけないじゃんかー」

「あの帰り道にある?」

「あそこ、見た目は古いけど、中にあるお菓子は新しいのたくさんあるしおばちゃん優しいし、オススメだよ!」

「へぇー」

「あ、でも敦くん大きいから入らないかも」

「そんなちっせーの?」

「敦くんが大きいの」

「まいう棒ある?」

「全種類あるよ!」

「…行きてー」

「なら今度一緒に行こうよ!敦くんの家、正反対でしょ?」

「うん」

「たくさんお菓子あるから、きっと敦くんも気に入るよ。スーパーより下手したらあるから」

「すげー!」




楓ちんの笑顔を見てると胸が煩くなる

なんだか抱き締めたくもなる

楓ちんが小さくて小動物みたいだから?

理由は分からない


赤ちんたちと話してるの見たらイライラするし、峰ちんが抱きついてたりなんかしたら捻り潰したくなる

今だって楓ちんが一緒にいこうって誘ってくれただけでなんだか嬉しい

もう訳が分からない





「お菓子ばっかり食べてたら喉乾いてきたー。水筒持ってくるの忘れたな。…ジュースでも買ってこようかな」

「は?ダメだし」

「なんで?」

「楓ちんはここにいるの。俺と一緒にいるんだ」

「…変な敦くん!」





どきん


また胸がうるさくなった

でも次はちゃんと理由がわかった気がする


ずーっとバカにしてた人を好きになるってこと

けどこんな俺にもそんな感情をなにを思ったか神様は与えたらしい

胸の奥のもやもやが晴れた気分

自分の気持ちがやっと分かった

そうと決まれば、楓ちんは俺のなんだから誰にもあーげない





「楓ちん!」

「なぁに?」

「…なんでもねー」

「なにそれ!」





名前を呼ぶだけでも幸せなんて、


俺の大好きなまいう棒がいつのまにか地面に落ちちゃってた




































の馴れ初め

(お昼寝でもしよっか!)
(そうするー)
















[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ