ただ手を伸ばす

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IH予選1回戦当日

私はベッドの上にいた


昨日からちょっと熱っぽいかなって思ってたけどまさか熱が出るなんて予想外

朝頭痛と身体のだるさで起きられなくて、熱計ってみたら目が点になった

電話したらすぐ来てくれた大我

そしたらなんで昨日言わなかったんだって怒りながらも林檎切ってくれて泣きそうになる

薬飲まされて、熱冷まシートおでこに貼られてまたベッドに寝かされた

リコ先輩には言っておいてくれるらしい

大我たちの練習の成果見たかったなぁ

負けるなんて考えてないけどやっぱり初めての公式戦だし見ときたかった


また寝てないのか大我の目は怖いくらい血走ってる

でも私の頭を撫でてくれた大我の手はいつも以上に優しい

遠くで大我が鍵借りるな、なんて言ってるのを聞きながら私はまた瞼を閉じた




































「ん、………」

「あ、起きましたか?」

「…………うわぁ!!」





目が覚めかけた視界の中でぼんやりとした水色

だんだんはっきりとしてきたと思ったらその水色が話して、それがテツだと分かるまで数秒かかった

思わず驚いて声をあげると病人が大声出しちゃいけませんって怒られる

いや、ビックリさせたのはテツでしょ


私の声に心配してきてくれたのか大我と先輩たちが飛び込んでくる

…え?なんで先輩たち?





「黒子!!ちょっと消えたと思ったらなにしてんだ!!?」

「僕、料理は上手くないんで邪魔かと思いまして」

「カントク!見とけっていったろ!?」

「いやー、見失っちゃって、」

「じゃあなんでケータイ構えてたんだよ!!」

「あの、先輩たちがなんでここに…?」

「ん?あぁ、試合の帰りに心配になって寄ったんだ」

「大丈夫か、楓?!水戸部も心配してるぞ!」

「あ、今火神がお粥作ってるけど食べにくいんだったらプリンとかゼリーとかも買ってきてるからずっと寝てたんならお腹になんか入れて薬飲んだ方がいいな」

「プリンは栄養たっぷりん、キタコレ!!」

「よし楓が混乱してるから一回黙れ、特に伊月」

「え、試合終わったって、私そんなに寝てたんですか?」

「俺が出ていってそっから起きてねーんだったらだいぶ寝てたな」

「朝楓の部屋に入ったんですか、火神くん?」

「あ?おぉ、だから鍵持ってたんだよ」

「これからは僕を呼んでくださいね、楓」

「だってテツ家とお「いいですか?」そうします、なんかごめんなさい」

「んで体調の方は大丈夫かよ?」

「ちょっとまだ熱があるような気がしますけど、朝よりはだいぶましになりました!」

「熱計れ、楓」

「じゃあ私がお粥見てくるから日向くんたちは楓見といてあげてよ!」

「は?!ちょ、待て!!早まるなカントク!!!」

「全力で止めるぞ、水戸部!!」

「カントクに鍋触らすな!」





すごい勢いで部屋を出ていった先輩たち

顔が本気で青ざめてたけどどうしたんだろう

そんなにリコ先輩、料理下手なのかな?

上手そうに見えるんだけど

ていうかあのテツまで本気で走っていったからそんなになのかもしれない

姉さんの時も同じような顔してたし

…言っちゃだめだけど姉さん以上、なんていうのはあり得ないと思う

ていうかキッチンからすごい音が聞こえるんだけど





「あ、楓、プリンとか持ってきたぞー」

「!!あ、伊月先輩、」

「驚かせた?ごめんごめん」

「いえ、大丈夫です!」

「キッチンに着いたときにはもうすでに遅かったから今また火神が作り直してるよ」

「あの短時間でリコ先輩、一体なにしたんですか?」

「聞かない方が絶対いい」

「そんなにですか」





全部を諦めたような顔をする先輩に、聞いちゃいけないことなんだなって直感的に把握する

私にプリンを差し出しながらベッドに座る先輩

あ、このプリン、私が好きなやつだ





「そのプリン好きだった?」

「!え、あ、はい!」

「黒子セレクトだよ、それ」

「テツがですか?」

「楓はこれが好きです、ってさ」

「あぁ、納得です」

「楓って黒子と知り合いだった?最初逢った時とかなんか知り合いぽかったけど」

「…中学の時の友達です」

「あ、そういや楓も帝光だったよな!女子バスケで有名だったの忘れてた。でも急に消えたけどどうしたんだ?全国三連覇も夢じゃなかっただろうに」

「バスケがしたくなくなったんです、とりあえずバスケから、全部から逃げたかったんです」

「なんか、あった?」

「………」

「言いたくないんだったら無理に聞かないから!大好きなバスケから離れたいくらい嫌なことだったんだろ?無理に言わなくていい」

「あり、がとうございます、伊月先輩」

「ていうか俺は楓って呼んでるわけだし、楓も下の名前で呼んでよ!なんか俺だけって恥ずかしい!」

「俊先輩、ですよね?」

「!そうそう!俺たち2年生にも火神とか黒子と同じくらい楓のこと教えてよ!俺たち誠凛男子バスケ部は楓の味方なんだからさ!」

「っはい!」

「じゃあ俺ちょっとあっち見てくるから、しんどかったら呼ぶんだぞ?」

「ありがとうございます」

「いいって!」




私の頭を一撫でして部屋から出ていった先輩

どうやら皆頭を撫でるのが好きらしい

皆の優しさが嬉しくて鼻の奥がツーンってする


私は先輩が持ってきてくれたプリンを開けて、一緒に持ってきてくれたスプーンで掬う

それを口に運べば、すごく甘かった







































アリが十匹

(栄養足りないからサプリメント入れましょうよ!)
(ちょ、止めろぉぉぉおおおお!!!)












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