ただ手を伸ばす

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「楓!!」

「あ、おはようテツ!」





次の日大我と朝練に行く


昨日あれから疲れて寝た私は大我の服を離さなかったらしくて昨日のあのままで寝た私たち

朝から思わず叫んじゃった

タオルで腫れた目を冷やしながら一緒に朝ご飯を食べた


体育館に入るとテツがすごいスピードで走ってきた

こんな早く動くテツは初めて見た気がする

…いや、征くんから逃げてた時も同じくらいだったかもしれない





「大丈夫でしたか?電話しようかと思ったんですけど喉を痛めていたらダメですし、お見舞い行こうと思っても家知りませんでしたし。そう思ってメールしたのですが、」

「大丈夫だよ。テツからのメール、すごく嬉しかった!」


「あ、楓じゃない!もう来て大丈夫なの?」

「リコ先輩!!元気100パーセントです!」

「それなら良かったわ!あんまり無理しちゃダメよ?…ほら、暇なら早く着替えてきなさい1年生」





リコ先輩がそう言うと、ちょっと渋々更衣室の方に向かっていく

まだ2年生は来なくていい時間なのに、なんでリコ先輩がいるんだろう、って今更ながら不思議に思って訊いてみたらリコ先輩が教えてくれた

生徒会の方で仕事があったらしい

練習始まるまでには帰ってくるわね、って言いながら足早に体育館から出て行ったリコ先輩の後ろ姿はすごくかっこよかった


やっぱり嘘つかなかったら良かったって今更ながらまた後悔

すごく胸がチクチクするや


それから一分たたない内に福田くんたちが来た。すごく眠そう

河原くん欠伸してるし





「おはよう!」

「はよー」
「おはよう、楓、ちゃん!」
「おはよ」

「あり?もう大丈夫なのかよ?」

「風邪だったんだろ?………ふぁあ、」

「うん大丈夫!河原くん眠そうだね」

「!おっおぉ」

「あ、そうだ!楓、のメルアド教えてもらってい?大丈夫かメール送ろうにもメアド分かんなかったからさ」

「俺も!」

「あんまちゃんと話せる機会なかったら訊けてなかったんだよな」

「もちろんいいよ!あと名前呼んでくれるの、馴れてからでも全然いいから!」

「おう、」





制服に入れてたケータイを取り出して4人でメアドを交換する

新しく登録された名前に、少し頬がゆるんだ





「なんか仲良くなれたみたいで嬉しいな!」

「……あっ、あとさ、」

「なーに?」

「名前で呼んでほしいな、なんて!ほら、そっちの方が仲良く……いややっぱり冗談!あっはははは……!」

「光樹くんと浩一くんと寛くん、だよね?」

「!!え、あ、おぉ!」

「私も仲良くなりたかったし、全然いいよ!じゃあこれからは名前で呼ぶ!」

「せせせんきゅ………!」

「…あ、そうだ!今度1年生でどっか行かない?大我とテツも一緒に!最初はストバスからでも」

「……いや俺たちアイツらみたいに上手くないしさ」

「え?」

「なんつーか……」

「じゃあそう思うんなら一緒に練習しようよ!」

「は?」

「あの2人はずば抜けてるだけ!大我はバネが高校生レベルじゃないしテツは影の薄さが常人じゃない。でもまだ3人にもいいところあるんじゃないかな?まだ気がついてないだけで。順平先輩みたいに3Pシュートが上手いかもしれない、土田先輩みたいにリバウンドが上手いかもしれない。まだ1年生だよ?あと2年間もあるんだから見つけていけばいいじゃん!」

「楓………、」

「大我たちをギャフンと言わせる勢いで頑張ろう!私で良ければお手伝いとかさせてもらうし」

「…そう、だよな…!!」

「やべ、今のですげー元気出た!」

「よっしゃ!頑張って俺のいいとこ見つけるぞ!!」

「その意気だよ」



「お前らなーにしてんだ?」



「「「「あ"、」」」」





声のする方を向けば順平先輩と伊月先輩がいた

黒い笑みを浮かべる順平先輩とその後ろで苦笑いしてる伊月先輩

横目で時計を見ればもう先輩たちが来る時間


あー………、しゃべりすぎちゃったらしい





「まず、なんでまだ制服なんだダァホ」

「「「着替えてきます!!!」」」

「ぁ、ちょっ!!」





先輩に言われて、3人同時に更衣室までダッシュ

こんな時に息揃えなくていいよ!!?

伊月先輩もトイレにいっといれー…キタコレ!!なんて言いながらトイレに行った

必然的に順平先輩と広い体育館に2人きり


怒られるのかな、しばかれるのかな


ヒヤヒヤしながら目を瞑ってれば、意外にも頭の上に感じた温もりは優しくて温かかった





「……ダァホ、殴んねーし怒んねーから、んな縮こまんな」

「え、あ、」

「さっきのちょい聞いてた。アイツら励ましてやってくれてせんきゅ」

「いや私は…!」

「これからも話聞いてやってくれよな。でも時間とかは考えて、な?」

「はっはい!」

「んじゃあんま無理すんなよー」





軽く何回か私の頭を叩いてから更衣室の方に歩いていった先輩

今日は先輩たちの背中が妙にかっこよく見える(伊月先輩以外)


私は手を止めていた作業をまた再開した


































後ろ姿

(かっこよかったぞ、日向!でも最後はやっぱりギャグで)
(死ね)









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