ただ手を伸ばす

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「大丈夫かよ、楓」

「うん大丈夫!ありがとう大我!」

「おー」





いつも通り、部活が終わった大我が家に来た

けれどいつもと違うのは手にスーパーの袋を持ってること

今日は私の具合が悪いから大我が作ってくれるらしい

なんだか罪悪感もあったけど、大我の手料理は久しぶりに食べれるし、こんなのもいいかもしれないなんて考えてしまう

普通に大我は料理上手いから作ればいいのに


料理をしてる大我と今日あった話をする

あー、エプロン大我は最近人気の料理とか家事ができる男子みたい





「んでさ、昼休みに呼び出されて幻のパン買ってこさされたんだよ」

「幻?」

「なんつーか………カオス」

「なにそれ!」

「そんでさ、売店すんげー人で吹っ飛ばされた。降旗とか瞬殺」

「大我が吹っ飛ばされたの?それは見たかったなー」

「楓がいたら潰されそうだったつの。結局誰が買ってきたと思う?」

「そうだなぁ………テツ?」

「は、なんで分かったんだよ!?もしかしてもうメールきてたのか?!」

「女の勘ってやつかなー」

「……なんでも黒子ばっかじゃねーか」

「え?」

「!!あ、いやなんでもねー!おら食うぞ」

「うん!」





今日の晩御飯はトマトスープとハンバーグとサラダ

大我の中で、体調悪い=スープと肉と野菜らしい

たしかあっちにいた時も同じような感じだった筈

大我が料理を運んできてくれたから私はお茶とかスプーンとかを運ぼうとしたらそれさえ取られて頭叩かれた

たぶん大人しくしてろって意味

ホントにごめんなさい





「じゃあいただきまーす」

「不味くても知んねーかんな」

「いやいつもながら美味しいです。夜ご飯当番制にしない?これ毎日食べれるとか天国」

「却下に決まってんだろ!!めんどくせーし、俺は楓が作った飯が食いてーし」

「下手なのに?」

「どこがだよ」

「部活が無い平日用に料理部にも入部してみようか思案中です」

「一緒に帰れねーからそれも却下」

「理由が幼稚園児みたいだね」

「るせー」





雑談しながら食べてると、いつのまにか10時

片付けは手伝おうとしたら無理矢理ソファーに座らされてまたもや失敗に終わった

大我の背中見ながらなんかお兄ちゃんみたいだなー、って考えてたら急に大我が振り向いた

うわー、なんか複雑そうな顔してる





「……楓みてーな妹いらねーよ」

「あ、口に出してた?じゃなくて、ひどい!!」

「んなバカな妹はお断りだ」

「人のこと言えないくせに…」

「うるせっつの!……あ、明日IHの予選トーナメント発表らしいぜ」

「あー、もうそろそろだもんね」

「そんでカントクが桐皇の話明日聞かせてくれってよ」

「……たしかそんなメール来てたなあ」

「オイ。やっぱ強かったのかよ?」

「…あ、のね、」

「?おー」

「…大輝くんと姉さんが、いた」

「はぁ??!」

「うわっ、」





急な大声に、ソファーから落ちそうになった


大我がキッチンからズンズン歩いてきて私の隣に座る





「そんでどうしたんだよ?!」

「…………逃げちゃった」

「、何で?」

「大輝くんが別人みたいで、ッ怖くて、気がついたら私っ……!」

「あー……、聞いて悪かった」





さっきのちょっと怖い顔した大我じゃなくて、今度は困ったような顔して私を抱きしめた大我

それから赤ちゃんをあやすみたいにポンポン背中を叩いてくれる

背的に、私は大我の胸板に顔を押し付けてる感じ

少し汗の匂いと、アクアマリンみたいな匂いがした





「んでその後はどうしたんだよ?」

「いつのまにか家に帰ってたっ」

「あの楓が迷わずにかよ?珍しい話もあるんだな」

「うるさい!」

「……泣いたのか?」

「うん、」

「どんぐらいだよ」

「自分でも分かんないくらい」

「…やっぱ楓はバカだ」

「え、」

「胸くらい貸してやるからいつでも俺を呼べよな。俺が無理なら、正直嫌だけど黒子でも、バスケ部の先輩でもカントクでも頼れ。1人で抱え込むんじゃねーよ」





祥吾くん、勇気を出して言ってみたよ

そしたらまたバカって言われた

けど祥吾くんの言う通り、なんだかもう心配してないみたいだ

祥吾くんは私なんかの笑顔が好きだって言ってくれたけど、今は泣きそうだよ





「ねっ、たい、が……!」

「んー?」

「胸、貸してもらってもいいっ……?」

「…たりめーだろ。もう枯れるくらい泣いちまえ」

「ッIH優勝に残しとくんだから枯れたら困る!!」

「そりゃそうだ」

































枯れる一歩手前まで、

((楓が泣いてんの見るのはあん時以来だ))










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