ただ手を伸ばす

□17
1ページ/1ページ








「だ、っいきくん、ねえさん………!」

「へ?」

「ッテメェ!!!!」

「っ、」





私が名前を呼べば、大輝くんがズカズカと歩いてくる

その途中叫んだ声はすごく怖かった

思わず固まった私の胸ぐらを掴んだ大輝くんに、泣きそうになる


そう、これが普通の人の行動なんだ

みんなは優しすぎたんだ





「テメェ今までどこにいやがった!!!いきなりいなくなって、俺たちがどんだけ心配して探したと思ってんだ!!!?俺たちはお前がッ…!!!!…クソ!!!!!」

「!!大ちゃん!!!」
「!!なにしてんだ!!」





私を殴ろうとした大輝くん

それを姉さんと孝輔先輩が止めた

捕まれてたせいで少し背伸びしてたのが、急に離されたから少しよろける

それを、大輝くんを止めてた孝輔先輩が慌てて支えてくれた

先輩が心配そうに声をかけてくれるけど、正直聞こえてない




なんだか視界が黒くなっていった

急に昔の大輝くんの笑顔が頭に浮かんだ





 「なーにしてんだよ」





あんなに悲しそうな顔をしてたっけ?

あんなに寂しそうな顔してたっけ?





 「ばっかじゃねーの!」






優しかった

そりゃ口は悪かったし、たまにイライラさせるときもあったよ?

けどたまに見せる優しさとか、全部が温かかった





 「おら、行くぞ!」





憧れて、全部に憧れて、

同じ男子だし大輝くんのことを分かってあげられる涼くんとかバスケ部のみんなが羨ましいとまで思える日々





 「あーねみー」





みんなで笑って、冗談言って、そんな毎日だったあの頃

皮肉にも、私はあの頃の大輝くんの笑顔が忘れられなかった

見てるこっちも楽しくなりそうな笑顔

輝いてて、とっても大好きだった





 「バスケすんぞ、楓!」





私の目の前にいるのは大好きだった大輝くんじゃなかった

変えてしまったのは矛盾にも私かもしれない

けれど、なんだか悲しくて、寂しかった

あの頃の大輝くんにはもう逢えないの?なんて馬鹿な考えまで浮かんでくる


私の目の前にいるのは大輝くんじゃない

別人なんだ





「大丈夫か、楓…?!」

「…………ん……か……な…」

「は?」

「ッ大輝くんじゃ、ない!!!!」

「あ、楓ッ!!!!」





私は走った

後ろから私を呼ぶ声が聞こえたけど立ち止まらなかった



なぜか涙が止まらない


どう帰ったかは覚えてない

我に返ったら家の玄関の前で、私は鍵で開けてなだれ込むみたいに家に入る

方向音痴な私が迷わずに帰ってこれたなんて奇跡だな、なんて考えながら玄関で座り込んだ


涙が止まらない


どれだけ拭っても溢れてくる

私は声を上げて泣いた



























くらい くらい

(この涙の意味をどうか教えてください)









[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ