ただ手を伸ばす

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 青峰SIDE





俺には双子の幼なじみがいる

ピンクの髪した双子

ちっさい頃から気ぃ付いたら隣にいた


姉ちゃんはさつきって名前で、胸がデカい

頭もいいし運動もまぁまぁ

おせっかいやきでうちのババアみてーな奴


んで妹の楓

こっちは正直さつきに比べると胸はねーし頭も悪い

けど運動やらせるとピカイチだ

双子なのに似てんのは髪と目の色だけ


大好きなバスケを朝から暗くなるまで毎日一緒にした(さつきは見てるだけ)

楓は俺のバスケに惚れたとか言ってるけど、俺も楓のバスケに惚れた

周りは俺より弱い奴らばっかの中で、楓だけは輝いて見える

初めてコイツとずっとバスケがしてーって思えた

神がかった運動神経もバスケがすんげー好きなとこも、笑顔も全部が輝いて見えたんだ



最初は、楓の言う"憧れ"だったと思う

けどずっと一緒にバスケしたり、一緒にバカして笑ったりしてるうちに、さつきとかほかの女に抱いたことねー気持ちが芽生えた


中学に入って楓は女子バスケ部の部長に

俺は男バスで初めて同世代でも俺と渡り合える奴らに逢った

そんでそいつ等も楓に惚れて、そっちの方でもライバルってやつになる


中2の全中も男女どっちも優勝したある日

ストバスに行ったら楓がいた

昔みてーに1on1して、休憩中

おかしなことを聞いてきた楓


自分が必要ない?

俺には楓しかいらねー


そら頭は悪い

けどそれ以上にバスケがお前にはあんだろーが


ちょっと悪いとこ上げた後すげーいい言葉言ってやろうと思って楓を見た瞬間、一瞬言葉が出なかった

スゲー泣きそうな顔した楓

我に返って言葉を出そうとしたとき、楓が座ってたベンチから立ち上がって、目に軽く涙を溜めながら『帰るね』って早口に喋って走ってった

やっちまったって思う

追いかけようとは思ったけど明日でいいかって考えながらその背中を見てた


次の日元気が取り得の楓が学校休んで、部活の奴らと見舞いに行くことになった

ちっさい頃から何回も行った楓の部屋に向かう

さすがにもう女の部屋だしさつきがさきに入って、部屋の前で待機してたらさつきが中で叫んだ

俺らが慌てて入れば、部屋は真っ白

例えなんかじゃねー

ホントに真っ白だった

テツが何かを急いで拾う

それは写真が貼ってあるコルクボード

俺らのちっさい頃の写真と、2人で撮ったやつ

アイツがカメラ買ったとかで、2人で撮った

こんな俺だけど、2人で撮れるって嬉しさと恥ずかしさで上手く笑えなくてしかめっ面

撮った後の楓の笑顔は今も鮮明に思い出せる


さつきは泣き叫んだ

テツは膝から崩れた


俺もクラクラする

視界がぐにゃりと歪んだ






































いつのまにか全中3連覇した

いつのまにか中学を卒業した

いつのまにか高校に入学した


正直その間の記憶はねー

ただ逢いたくて逢いたくて、


けど楓との繋がりだったバスケが急に色褪せちまった

おもんない

楓みてーに俺をワクワクさせねー

楓みてーにキラキラしてねー

楓みてーに……もいっかいやりたいと思わなくなった

どんだけやっても、どんだけ練習しても、おもんねーだけ

練習する意味がなくなって、しなくなった



そんでインターハイのちょい前

いつもみてーにサボってたら血相変えてさつきが走ってきた

正直また説教かと思ったら、さつきの口から出た言葉にただ驚く


楓がいた?

あんだけ求めた楓が?

逢いに行こうとすればさつきに止められた

楓を傷つけたくないから逢いに行くな?

もう傷つけたからここにいない

俺はそう言った

傷つけたのは誰だ?


あの日から分かってた

楓がここにいねーのは俺のあの言葉のせいじゃねーのかって

その俺が言った言葉は不覚にも俺自身に深く抉るように突き刺さる

またあの時みてーに視界が歪んだ




んな次の日、うちで練習試合をやるらしい

若松の好きな奴が見に来るらしく朝からソワソワしてやがった

昔の俺と重なって見えてなんだか腹が立つ

そのまんま中庭に行ってサボることにした

いつもみてーに寝転がってるとまた昨日みてーにさつきが呼びに来る

ちょっと話してると、いつのまにか試合終了時間

横で慌てるさつきは笑えた

体育館に行きながら横で煩いさつきを横目で見ながら笑う


体育館に行くまでの渡り廊下にさしかかった時、言葉の途中で息が止まるかと思った

綺麗なピンク

あっちも俺を見て目を見開いてる

あの時から色褪せてた世界が急に色を持った気がした






































世界の変化

(心臓の音がやけに大きく聞こえた)









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