ただ手を伸ばす

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あれから涼くんがスゴい勢いで走ってきて、ステーキ屋まで一緒に行ってもらう

その途中はお互いに他愛もない話をした

私のことに触れなかったのは涼くんなりの優しさだと思う





「あ、あそこッスよ!」





涼くんの指差す方を見ればステーキ屋って書いてるお店があった

その前には水色が見える

あ、テツだ





「!楓!!」

「合ってたみたいだね、涼くん」

「良かったッス!」

「何もされてないですか?大丈夫ですか?僕を呼んでくれればすぐに迎えに行ったのに」

「ちょ、ゴミ見るような目で見ないでほしいッス!!」

「あ、間違えました。ゴミに失礼でしたね」

「まさかのゴミ以下?!」

「テツ、ほかの皆は?」

「…まだ皆中です。僕は外の空気を吸いに来ただけなので」

「?なんで?」

「行けば分かると思います。さぁ中に戻りましょうか」

「…あ、待ってほしいッス、黒子っち!話がしたいんス」

「僕ですか?」

「はいッス」

「………分かりました。では楓は先に戻っておいてください、すみません」

「うん!」





私がそう言えばテツと涼くんはどこかに歩いていった

テツは私と違って方向音痴じゃないから大丈夫でしょ


私はそんな姿を見送ってからステーキ屋に入る

案内に来てくれた店員さんに連れがいることを話せば、すぐに分かったみたいで席まで連れて行ってくれた


…コメント?求めないで欲しい






「ほまへ、ほそひはへーは!!!」

「そうかな?でもとりあえず飲み込んで話してね」

「今ので通じた??!」





席にはダウンしてる先輩と、口いっぱいになにかを詰め込んでる大我

何があったんだ一体





「あ、おかえりなさい!」

「…どうしたんですか、これ?」

「お金がなかった結果よ」

「(あー、たしか涼くんが食べきったらとかどうたらこうたら言ってたな)」

「…んぐっ!楓、遅いんだよ!!ここまで遅くなれとは言ってねーわ!!!」

「え、送り出してくれたの大我じゃん!」

「ッだからって……!!」

「喧嘩してんじゃねーよ。ほら喧嘩両成敗!」

「…別に喧嘩じゃねー、です」

「火神くん全部食べれたみたいだしお店出まっしょっか!」

「おお、そうだな。……うぷっ」

「……」

「水戸部しっかりしろぉぉお!!!」





立ち上がった大我のお腹は赤ちゃんがいるみたいにおっきかった

これが1日でいつものお腹に戻るんだから、不思議だよね


後ろで店員さんが泣く泣く私たちを見送る

たしかにこんな客迷惑この上ないだろうな





「…そういえば黒子くんは?」

「あれ?またいつもみてーにいなくなったんじゃ、」

「?テツならさっき涼くんとどっか行きましたよ」

「今回はリアルにいなかったのかよ!!」

「探せ!」





テツがいなくて探すことになった

大我は"涼くん"って言葉に反応したのかズンズン歩いていく

私はリコ先輩たちと行動した



そしてストバスで3人を見つける

私の方に走ってくる涼くんの首根っこを掴む大我

そんな涼くんをいつも通り蹴ってるテツ

向こうにピクリとも動かない男の人、数人


……カオス超えてるよね

あ、テツは捕まえられてリコ先輩に逆エビぞりの刑されてる





「…じゃあ帰るッス!またね、火神っち!楓!黒子っち!皆さん!」

「まとめてください、長いです」

「"っち"?!」

「良かったね、大我!涼くんは認めた人にしかそれ使わないんだよ?」

「おめでとうございます、火神くん」

「嬉しくねーし、なんかお前の言い方ムカつくんだよ、黒子!!誉められてん貶されてんのか分かんねーよ!!」

「自意識過剰ですよ」

「………」

「無言で胸倉掴もうとしない!!」

「ほらもう帰るわよ!!」





先輩の声に、私たちは生半可な挨拶を返した






























君が笑えば、

(世界中が笑うのに)


(あ、ポケットに幸男先輩のメルアド……)









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