ただ手を伸ばす

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部活が終わってから行くことを伝える連絡を先輩にすれば、時間と場所を教えてくれた
(ご親切に地図と桐皇までの音声ガイドのURLもメールに添付されてたよ)


せっかく呼んでもらえたんだから少し早めに起きて簡単な差し入れも作って、地図と音声ガイドを頼りに向かう

若干迷いながらも試合開始時刻の5分くらい前に着いた

入っていいのかな、なんて考えながら正門辺りをウロウロしてたら試合開始時刻になってたから慌てて門をくぐる

警備員さんに体育館までの道順を聞いて、同じところを何故か何回も通りながら、やっと体育館に着いた


入り口から中を覗けば、体育館の上の通路の所から見れるみたいでそこに上って試合を見る

現在第3Qでダブルスコア

……私どれだけ迷ってたんだ

第3Q終わりかけだし


コートに視線を移した時、ちょうど孝輔先輩が相手がミスしたリバウンドを取ったところだった

スゴい独特のかけ声だ

そのままボールを繋いで、謝りながら少年Aくんがシュートを決めた

私が思わず声を上げると孝輔先輩がこっちを見上げる

それから笑って手を挙げてくれたから私も思わず手を振ればまた笑った先輩

それからすぐに第4Qに入って結果的にトリプルスコアで幕を閉じた

私は試合終了の挨拶を聞き終わった後下に降りる





「先輩!」

「来てくれたんだな!いねェから来ねェかと思った」

「迷いました」

「……ちゃんと地図とか送ったろ?」

「いや学校まではちゃんと来れたんですけど学校内で迷っちゃいまして、」

「あー…、そこまで考えてなかったわ」


「この子かい、若松が熱上げてんのは」


「え?」「ちょっ!!」





先輩の後ろから歩いてきた黒髪糸目の男の人

楽しそうに笑いながら先輩の肩に肘を置いて私を上から下まで品定めしてるみたいに見る





「あぁ、驚かせてしもた?ワシはキャプテンやらせてもらってる今吉翔一や。よろしゅーな」

「よろしくお願いします!私は「知ってるで」え?」

「楓ちゃん、やろ?」

「何で名前知って……、」

「あ"ー!!ちょっと外出てきます!!」

「わっ、」

「楽しんできてや〜」





孝輔先輩に引かれて体育館を出て行く

後ろには貼り付けたような笑みの今吉先輩


着いたのは渡り廊下

私の手首を引く孝輔先輩の頬は試合後だからかほんのり赤い





「わっ悪い、あの人も悪気があるわけじゃあ決してねーんだ」

「いやいいですよ、大丈夫です!……あ、これ差し入れです」

「差し入れ?…えっあっ、なんか頼んだみてェだよな、ごめん。あとさんきゅー!すげー嬉しい」

「私の作ったやつなんで不味かったら捨ててくださいね」

「!手作り?!いやそんなことねェよ、絶対」





私が差し入れに、サンドウィッチと蜂蜜レモンを出せば受け取ってくれた先輩

蜂蜜レモンは王道すぎたかもしれない





「試合、どうだった?」

「すごかったです!桐皇はチームプレーより個人プレーを重視するタイプなんですね」

「おぉ、それがうちに一番合ってるからな」

「でもやっぱり負ける気がしませんね」

「上手く行けば楓んとこと当たるんだし、それまで潰れんじゃねェぞ」

「もちろんです!…そういえば、先輩が言ってた選手ってあのよく謝ってた子ですか?」

「ん?いや違ェよ、アイツ練習試合休んでんだわ」

「体調でも悪いんですか?」

「……いやただのサボリ。いまマネージャーもソイツ探しに行ってる」

「見てみたかったんですけど……。あ、名前は何ですか?まだ聞いてませんでした」

「名前?アイツん名前はな、




「もう、青峰くん!!ちゃんと試合出てよ!」

「ダルいって何回言わせ、ん……だ…」




青峰大輝だ」





時間が止まった気がした

































透明な水

(紡ぎだそうとした言葉は空気に溶けた)








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