ただ手を伸ばす
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……同時刻、場所は変わってどこかの学校
諸謂裏庭と呼ばれる場所で、ある1人の男子が寝転んでいる
そんな彼の傍に血相を変えたある女子が走ってきた
男子の方は薄く目を開ける
「やっ、と見つけた………!!」
「あ?また説教か?」
「それもあるけど、ッ今はそんなことどうでもいいの!!!」
「そんなことって……、お前マネージャーがそれでいいのかよ」
「話反らさないで!!…データ収集に海常高校で今日あった練習試合を友達に録画してもらってて、今帰ってきたから見たの」
「海常とどこだよ?」
「新設の誠凛高校!!」
「……あぁテツが行ったとこか。それが一体なんだってんだよ」
「いたの………!!!!」
「主語言え、主語」
「誠凛側マネージャー席に楓がいたの!!!!!!」
「、あ?」
「だから、楓がいたの!!!!!やっと見つけたの!!!!!!!!」
「……誠凛っつったな?」
「どこ行くの、大ちゃん!!?」
「誠凛に決まってんだろ。楓に逢いに行く」
「!!待って!!!楓にも理由があったんだろうし、楓が逢いたいって言ってからでも…!!」
「……どんだけ待ったと思ってんだ。どんだけ心配したと思ってんだ。ッどんだけ!!どんだけ逢いたかったかお前も知ってんだろうが!!!」
「大、ちゃん…………。……痛いくらい分かるよ、私だってそうだもん。…でもダメ、私は……楓の姉さん、楓が傷つくことはしたくないの!!これだけは分かってよ、大ちゃん!!?」
「あぁ?!傷ついたから今ここにいねェんだろ!!?」
「ッだから私は!!!」
「お前ら何してんだ!!」
「……チッ、」
「先輩………。…すみません」
2人の先輩らしい男子が騒ぎを駆けつけてきたらしい
言い合う2人の間に入り、黙らせる
男子の方は悔しげに舌打ちをし、女子の方は先輩の言葉に我に返ったようで、俯いた
「練習ん途中に試合のビデオ見てて急に血相変えて出て行ったと思ったら……なんだいきなり」
「……なんでもないです、突然すみませんでした」
「つか青峰!!勝手に練習サボってんじゃねーよ!!!」
「じゃあサボる」
「そういうことじゃねー!!!」
「つかうるせー。…あっち行けよ」
「んだと??!」
「!せ、先輩!!だ…青峰くんの口が悪いのは私が謝ります!だから今回だけは見逃してやってください!!」
「……今回だけだからな。優しいマネージャーに感謝しろ」
先輩の言葉は男子の耳には届いていなかった
頭にあるのはある少女のことのみ
先ほどまで寝ていた場所にもう一度横たわり、ゆっくりと瞼を下ろしていく
瞼の奥にあったのは鮮やかなピンク色の髪のユニフォーム姿の少女の輝かしい笑顔だった