ただ手を伸ばす

□赤
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 赤司SIDE





「今回も良かったぞ、赤司!」





数学の小テスト返しの時間

俺は当たり前だが満点

自分の教え方がさも上手いからとでも言うように、嬉しそうに笑う教師

お前のおかげでは全くないから安心しろ


テストを受け取ると、教師が急に眉毛を漢字の八のようにして俺を見てきた

悪い予感しかしない





「……赤司、お前の頭を見込んで頼みたいことがある。違うクラスにどれだけ教えても全く伸びない生徒が1人いるんだ、少し教えてやってくれないか?」

「俺が、ですか?」

「そうだ。今日はたしか明日の芸術鑑賞で講堂が使えないだろう?少しだけでいいから頼めないか?」





…絶対謀っただろ

たしかに今日は芸術鑑賞の準備があるらしく部活がない


断ってもいいが、後々面倒くさいことにはなりたくない





「……分かりました。でも少し部活の方で基礎練をやっておくように言いたいので少し遅くなりますがいいですか?」

「おぉ、やってくれるか!!もちろんいいとも、では放課後この教室でな!」





そういえば誰を教えるか、名前を聞くのを忘れた






































……――――こういうことだから少し遅れる」

「ぶはっ!赤司に教えてもらうなんてかわいそすぎだろ!」

「たしかにそうなのだよ」

「……2人は基礎練3倍」

「ちょっ!!おかしいだろ!!?」

「さつき、頼むよ?」

「はーい!」

「桃井!?」

「でもなんで俺なんだ?緑間の方が向いているだろ」

「知らないのだよ!!」





部活に行けば、既に青峰と緑間とさつきはいた

理由を話せば、明らかに憐れみの目

しかしそれは俺に対してではなくその俺が教える相手

イラついたから基礎練3倍





「つか行かなくていいのかよ?もう結構過ぎてんぞ」

「……なるべく早く帰ってくる」

「ごゆっくり〜」





ダルそうに手を振る青峰

それなら振らなくてもいい


一度降りた階段をもう一度上がっていく

もし青峰みたいな奴だったらどうしようか

ミーハー女だったら?

…手が出るのを(できるだけ)抑えないとな


さっき出たばかりの教室に入れば、教室の真ん中辺りの席に1人座っていた

ほんのりと夕陽で赤くなった教室と同化してしまいそうな髪色

俺が名前を呼ぼうとした時、あちらも俺に気付いたらしい





「赤司くん!」

「ももい………」





そこにいたのは密かに俺が思いを寄せる人がいた

俺と同じ1年から部長の桃井楓さん

一目惚れなんて空想の世界と思っていたけれど、桃井に出逢って本当にあるんだと知った

人を好きになることさえなかった俺は見てるだけで幸せ、なんていう気持ちになったのは初めてで、話すことさえ困難

話したのは数回だけ

その度に好きになっていく自分は気持ち悪い

隠していたのになぜかさつきには簡単にバレて、何度か話す機会をくれた

青峰は正反対に俺と桃井を逢わせないようにしてくる

部長同士だからいつでも逢えるのにな
(桃井に対してはそんな勇気湧いてこないが)


呼吸が上手くできない

心臓が煩い

身体中が熱くなった





「あ、もしかして勉強教えてくれるのって赤司くん?…ごめんね、私バカだから」

「…いや、いい。勉強するか」

「うん!」





やっぱり青峰の言うとおりゆっくりするとしよう


桃井の席の前に座って椅子を後ろに向けて座る

机の上には筆記用具と今日帰ってきたであろう小テスト

その答案用紙を見て思わず笑う





「ちょっ、笑わないでよ、赤司くん……!」

「ごめん、つい…」

「ふざけてるわけじゃないんだけどなあ」





つい笑ってしまうぐらいの点数だった

青峰がこんな点数持って帰ってきたら苛つきと呆れしか出てこないのに、少し照れながら怒る桃井はなぜか微笑ましい





「?記号問題だけ正解率が異常に高いな」

「あ、それはね、真くんのおかげなんだ!」

「真くん?」

「真太郎くんだよ」





そう言いながら筆箱から緑の鉛筆を取り出して俺に見せた

底面が六角形のその鉛筆の、一面ずつに数字やアルファベットなどが書かれている


……ていうより真くん?

緑間はそんなに仲が良かったか?

頭が苛つきとモヤモヤでおかしくなりそうだ





「分からないところがあったらこれを転がすの!そしたらスッゴく当たるんだ!」

「さすが緑間だな」

「うん!」

「…ほら、何が一番苦手なんだ?」





言っちゃ悪いが、壊滅的だった

たぶん桃井じゃなかったら殴って部活に行っていたと思う


なんとか今習っているところまで教え終わった時には辺りは真っ暗になっていた





「頭の容量オーバーだ…………」

「空っぽだったんだから大丈夫だろ」

「ひどい!!」





途中柔軟剤とはまた違う甘い匂いに、こっちが集中できないときがあったが無事に耐えきったらしい

そして胸が苦しいのは変わらない(というより今の方が悪化してる)が、軽い冗談まで言えるようになった

我ながらすごい進歩だと思う





「ホントにありがとう、赤司くん!すっごく分かりやすかった!」

「次のテストに期待しておくよ」

「今日で赤司くんの印象変わったなぁ」

「印象?」

「うん。いつもしかめっ面なイメージだったから」





緊張してたんだ、仕方ないだろう





「でもよく笑うし、冗談も言うし!……あ、嫌な気分にさせたらごめん」

「今日で変わったんなら別にいいよ」

「ありがとう!…ねえ、赤司くん!」

「なんだ?」

「下の名前で呼んでいいかな?」

「え、」

「そっちの方が仲良く見えるかなあって……。ダメ、かな?」

「!あぁ。…その代わりだな」

「?うん」

「俺も、呼んでいいか……?」

「……ぷっ、あははははは!!」

「なっなんで笑うんだ…?」

「いやだって真剣な顔で何言われるのかなって思ったら、そんなことだったから……!!」

「そんなこと?!」

「だって…!!」

「そ、それでいいのか……?」

「もちろんいいよ、征くん!」





また好きになった
























の馴れ初め

(緑間、明日の練習5倍ね)
(なぜなのだよ!!?)







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