ただ手を伸ばす
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一瞬だった
さっき大我がやってみせたみたいに大我を抜き去って、ブロックも気にすることなくダンクを決めて見せた涼くん
全ての能力が上がってる
まるで別人だ
私は無意識に口を手で抑えてた
「ん〜、これは……ちょっとな〜」
「は?」
「こんな拍子抜けじゃやっぱ、挨拶だけじゃ帰れないスわ。……やっぱ黒子っちください。てか楓はもらいます」
「あ?!」
「海常(ウチ)においでよ、また一緒にバスケやろう!」
「なっっ!!!?」
「マジな話、黒子っちのことは尊敬してるんスよ?こんなとこじゃ宝の持ち腐れだって!それに楓なんか、余計にッスよ!!俺、また楓と1on1したいし、楓と離れたくない!!!
…ね、どうスか?!」
「……そんな風に言ってもらえるのは光栄です。………丁重にお断りさせて頂きます」
「文脈おかしくねぇ!?そもそもらしくねっスよ!!勝つことが全てだったじゃん!!なんでもっと強いトコ行かないの?!」
「"あの時"考えが変わったんです。…何より火神くんと約束しました、キミ達を………"キセキの世代"を倒すと」
「…………やっぱらしくねースよ。そんな冗談言うなんて、」
「……ハハッ。ったく、なんだよ…、俺のセリフ取んな黒子」
「冗談苦手なのは変わってません。本気です」
「ッ楓は拒否権ないッスからね!?」
「…今の涼くんは嫌いだよ」
「!!な"っ………!」
「人を見下す涼くんは嫌い。バスケはどこでやっても楽しいよ?強さなんて関係ない、だって強くすればいいだけじゃん。……まぁこんなこと言いつつ私はここが大好きなんだけどね!!」
「そういうことです」
「楓はやるかよバーカ!」
「…っじゃあ勝ったらウチに来てください!!」
「あ?聞いてたのかよ?」
「ウチが勝ったら楓はウチに。誠凛が勝ったら誠凛を認めるしもう見下したりなんかしないッス!!!」
「それじゃあ誠凛(ウチ)にメリットなんて「いいわよ」っカントク?!」
「その言葉、忘れないでね?」
「もちろん!!じゃあ今日は帰ります!…楓、次逢うときはもうウチの制服かもしれないスね?」
「!!それを、」
「…やっぱりこの気持ちは変わんないッス、反対に増してる。ホント、どんな毒俺に盛ったんスか」
「え?」
「じゃあ!!!」
私をまた抱き締めた涼くんは、ぼそぼそと呟いた後笑顔で別れを言った
何を言ってるかは全く分かんなかったんだけど、なんとなく声のトーンから笑顔じゃない気がする
それから私の腕を取って手首にキスをして体育館から出て行った
涼くんが見えなくなる所まで涼くんの背中を見てたら、急にリコ先輩が顔を真っ赤にさせながら叫んだ
「あっアンタそれの意味分かってる??!!」
「?え、昔からさよならの代わりにこれなんで、さよならって意味だと……」
「……誰かこの子に"危険"って言葉の意味を教えてやって!!!!」
「えぇ?!」
場所と意味(……やっぱり僕も挨拶に、)
(だから、その鋏はどこから出したんだよ!!?)