ただ手を伸ばす

□黄
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 黄瀬SIDE






青峰っちのバスケに惚れて、さっきバスケ部に入部した

ちょっと練習しとこうと思って、近くにあったストリートコートに行けば先客がいた

女子で、制服見る限りうちの生徒らしい

てかスカートなのに何やってんだ

……あ、スパッツ履いてるし


女子なんて皆一緒

今日は諦めて違う日にするかと考え直して、振り向こうとした

けどその女子がシュートしようとしたのを見た瞬間、目が離せなくなった

その女子はこちらを見ながら、身体は横に向いてる

そのまま片手でボールを軽々と投げた

ボールは吸い込まれるようにゴールへと入る


……これじゃあまるで、





「青峰っちと同じじゃないッスか……!」


「たしか今日バスケ部入った人だよね?」

「え?」

「いきなりごめん!私は女子バスケ部部長の桃井楓!…え、っと、アナタは?」

「俺を知らないんスか……?」

「え、同じクラスだったかな?!」

「いやそうじゃないんスけど…、」





自分で言うのもあれだけど、俺を知らない女子なんてこの学校にいないと思ってた

目の前できょとんとした表情をする桃井さんにこっちが驚いた





「黄瀬、涼太ッス…」

「……あぁ!!モデルやってるよね?たしか、るうちゃんが騒いでた!」

「そうッスよ!」

「そういえば、君なんでもできるんだって?どう、私と1on1してみない?」

「は?」

「大輝くんに聞いたよ?大輝くんのバスケに惚れたらしいね!…私もなんだ!私も大輝くんを尊敬してる!自分で言うのもおかしいかもしれないけどずっと大輝くんを見てきた。私なんて簡単に倒せないと大輝くんなんてずぅっと遠いよ?」

「…いいじゃん!受けて立つッスよ!」

「じゃあスタート!」





そんな桃井さんの掛け声でゲームはスタートした

やり始めて1日もたってないけど、ある程度はできる自信はある

まぁ女子を倒すことくらいはできるだろ



そんな軽い考えで始めたのが間違いだった

ドリブルを始めた瞬間、明らかに桃井さんの目つきが変わった

ブロックしようと手を伸ばすが、それはフェイクで簡単に抜けられる

すれ違いざま、思わず鳥肌がたった

慌てて振り向けばスゴいスピードでゴールに向かってた


この身体能力はガチの天才だ……!!


くすむ足を抑えて桃井さんのコース先にダッシュ

桃井さんが構えたのを見て、俺ん中で1番高いジャンプをかます


けど桃井さんは失敗したのかゴールを簡単に過ぎた

成功したかと思って桃井さんを見れば口角が怪しく上がったのが見えた

悪い予感がする

地面に着地する直前に、ボールを上に放った

そのボールは前に戻ってきてゴールのリングでくるくる回って、ゆっくりとゴール


言葉が出なかった





「うーん、やっぱり綺麗に入んないなぁ」

「…今の技は青峰っちのッスよね……?」

「昔から一緒にバスケして、一緒に練習してたらいつのまにかできるようになってた!」

「どんな身体能力してんスか?!」

「うーん、黄瀬くんも絶対できるようになるよ?なんか確信」

「…じゃあその言葉信じるッス」

「ありがと!」





青峰っちの時みたいに、笑いが止まらない

でもなんだか違う

尊敬もそりゃあしてる

しないわけない

でもなんだか違う

すごく心臓がうるさい

緊張してる時とは全然違う心臓

軽い運動しただけなのに身体がすごく熱い





「また1on1しようね?すんごく楽しかったよ!じゃあ改めてよろしくね?」





……あぁ、やっと分かった


こんな俺にもやっと春が来たのか





「よろしくッス、"楓"!!」









































の馴れ初め

(あれ、いま……)
(下の名前で呼んでほしいッス!)






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