ただ手を伸ばす

□緑
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 緑間SIDE





ある日の放課後、俺は図書室へと向かっていた

理由は言わなくても分かるだろうが、借りた本を返すため

期日をすっかりと忘れてた

…早く部活に行かないと、赤司が煩い





 ガラガラッ





「……ん?」





図書室解放時には必ず図書委員がいなければいけないことになっている

しかしその姿が見えない

…返すには図書委員の確認の印が必要なのだがどうするか


するとカウンターでなにか動いた気がして、そちらを見てみると、そこには女子がいた

寝ているようだ

ピンクの髪で図書委員の女子なんて該当するのは1人しかいない





「桃井、起きるのだよ」





1年にして女子バスの部長

練習している場面や、日常的に見るが話したことはない

よく男子が騒いでいるな……

どうやらうちのマネージャーの双子の妹らしい


少し揺らせば、唸りながら桃井は目を覚ました

おい、涎の跡付いてるのだよ





「あ、れ……私…」

「寝ていたのだよ」

「え!!?ごめんなさい!!本、返しに来てくれたんだよね!?」

「あぁ」

「いま判子押すね!」





ガサゴソガサゴソと桃井が判子を探す

よく見れば寝癖も付いてるぞ





「たしか緑間くんってバスケ部だよね?」

「あぁそうだ」

「よかった!間違ってたらどうしようかと…。あ、私は、」

「桃井楓、だろう?」

「!正解!!よく私なんて知ってたね!」

「いや、」





有名じゃないか

という言葉は出てこなかった

桃井の笑顔は、本当に綺麗という言葉しか思い浮かんでこない

柄にもなくただそう思った


たしかにこれなら青峰が騒ぐのも痛いほど分かるな





「?ねぇ、緑間くん!この仕事が終わるまで私と話しとかない?とっても暇なの!」

「っあ、あぁ、もちろんいいのだよ」





もう抜け出せない



























「真くんは部活行かなくてもいいの?」

「あぁ、もう赤司には言ってある」

「なら安心だね」





とりあえず、名前呼びを頼んだらまた笑顔で了承してくれた

…自分で自分が気持ち悪いな






「"型のないシュート"が撃てるのか?」

「うん!大輝くんとずっと練習してたら撃てるようになったんだ!」

「そんな軽いノリで撃てるようにはならないだろ」

「うーん、あの大輝と一緒にいるからよく分かんないや」

「身体能力はずば抜けてるからな」

「そうだよね!!…あー!部活行きたいよう!!!」

「なぜ委員会など入ったのだ?図書委員が部活に遅れることは分かっていたことだろう」

「寝てたら勝手に決められてた」

「自業自得というのだよ」

「大輝くんみたいなこと真くんまで言わないでよ!!」




 キーンコーンカーンコーン




「あ、やっと終わった!」

「いつも入室者はいないのか?」

「うーん、クラスの皆はたまに来てくれるよ!」





…あぁ、クラスの奴らは楓がいつ行くのか知ってるからな

絶対楓目当てなのを分かっていないだろ





「一緒に部活行かない?」

「あぁ。だから早く鍵を返しに行ってくるのだよ」

「!!うん!」





図書室を出て、そう言えば、嬉しそうに職員室に走っていった

その後ろ姿を自分でも分かるくらい頬を緩ませて見ていると、後ろから魔王の声が聞こえた





「……緑間?」

「!!」

「何を、しているんだい?」

「赤、司……!いやこれは借りた本を……!!」

「明日の練習3倍」

「ちょ、待つのだよ!!!」





























の馴れ初め

(あれ、真くんは?)






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