ただ手を伸ばす

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 黒子SIDE





突然だけど、僕には好きな人がいる


中学生時代、僕はバスケ部に所属してた

最初は僕なんか1軍に入れるなんて考えてもみなかった

女子バスケ部部長

その人は僕と同じ1年生にも関わらず、才能が認められ部長をやってのける人

うちの赤司くんと同じだ

ちなみに1軍のマネージャーの桃井さんの双子の妹で、青峰くんの幼なじみらしい

頭は悪いらしいが、可愛いし運動神経は抜群


ある日僕が残って自主練をしてる時だった




『自主練?えらいね』

『あ、』

『黒子くん、だよね?私は桃井楓だよ、よろしく!』




僕をいつでも見つけてくれた

それからかな、楓さんが自主練に付き合ってくれるようになったのは

僕なんかを相手にしてくれること自体おかしいのに
僕なんかなら簡単に倒せるハズなのに

楓さんがいるからか、青峰くんも一緒にしてくれるようになった

それからちょっと経って、1軍に昇格した

それを報告したら楓さんは自分のことみたいに喜んでくれた

その時からたぶん楓さんを好きになったんだと思う


1軍に入って、楓さんは愛されてるんだな、って改めて実感

紫原くんはお菓子をあげてるし、赤司くんは誰にもみせないような笑顔を見せてて、
青峰くんは明らかに独占欲丸出しだし、緑間くんだって普段は人に近づきたがらないのに自分から触れようとしてる

黄瀬くんは、楓さんに対しての感情は尊敬じゃないからか、普通に呼んでた

最初の頃はただ驚いたのを覚えてる

でも1番信頼してくれてるのは僕だってことを知ってるからいいやって考えたのも覚えてる

楓さんは不安になったらなんでも僕に相談してくれた

だから僕は知ってた、桃井さんと比べられるのが嫌だってことも、自分に自信がないってことも


中2の全中を優勝して、また楓さんが悩み出した

そしてそんなある日、あのめったに休まない楓さんが風邪で学校を休んだ

その日たまたまテスト前で早く終わった部活

いつものメンバーでお見舞いを行くことになった





「大丈夫かな〜、楓ちん」

「アイツならピンピンしてるだろ」

「そう言ってる割には早歩きになってるのだよ」

「緑間もね」

「な"っ……」

「ゼリー買っていった方が良かったッスかね」

「家にあったハズよ!」

「なら良かったです」





桃井さんたちの家には何度か行ったことがあった

僕たちはいつも通り階段を上って楓さんの部屋へ

桃井さんが先に入った

入った瞬間桃井さんが叫んだ

その声を聞いた瞬間、僕たちも慌てて部屋に入る

思わず僕も叫びそうになった


ホントに何もなかった

真っ白

けれど真ん中に1つだけあった

桃井さんは急いでそれを拾い上げた

それはコルクのボード

僕たち男バスと一緒に撮った写真、たぶん小さい楓さんと桃井さんと青峰くん
あと恥ずかしそうに、けど嬉しそうに撮ってる青峰くんとの2ショット

ほかにもたくさん


一瞬で理解した

楓さんはここにはいない
ここには帰ってこない


言葉が出なかった


何も言われなかった悲しさ、泣きそうだ


足に力が入らなくなって、座り込んだ


























あれから青峰くんは変わった

荒れた

枷が外れたみたいに荒れた



そして皆違う高校に行って、僕は火神くんに逢った

なんだか青峰くんに似てると思った

仮入部2日目

少し遅れて部活に行けば、火神くんと楽しそうに話してる女の子がいた

珍しいな、なんて考えながらその女の子を見る

心臓か止まったかと思った

黒髪だけど、黒い瞳だけど
全身が楓さんだと叫んだ

思わずカバンを落としてしまった

息が詰まりそうになるのを抑えながら、話しかけた

けれど簡単に否定された


けれど僕の中では確信に



練習中も、ミニゲーム中も、正直気が気じゃないしミニゲームが終わった時も楓さんを無意識に見てた

けど楓さんは今楽しそうに火神くんと話してる

胸が締め付けられた

僕は楓さんに駆け寄った






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