あはれとも、

□漆幕
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吉原に入って、上の通気管みたいなのの上に座る

そこからの景色は、なんだか別世界みたいだ

鳳仙の旦那が作った欲にまみれたこの街

けれどこの街はなんだか懐かしい匂いがした気がした

初めてなのにネ


今阿伏兎はなんか餓鬼を捕まえに行ってる

こっからは見えない

けれどだんだん大きくなってくる音

気になって番傘片手に飛び降りる

そうすれば煙で視界が悪くて、あんまり見えないけど、俺と同じ髪色だけが目に入った

明るいオレンジ

思わず嫌気がさす

傘を振りかぶった





「邪魔だ、どいてくれよ。…言ったはずだ、弱い奴に用はないって」





振りかぶった傘を思いっきり落とした

けれど止められた

黒い番傘

同じように黒い髪

ちらりと見えた蒼い瞳

思わずバランスが崩れかけた


風鈴みたいな声が耳に届く





「!!風榎、姉…………!」

「ッ早く、逃げなって…!でなきゃっ、これから口きかないからなっ………?!」

「………風榎、?」





無意識に口から出てた名前

その名前に反応したように風榎は俺を見上げた

久しぶりに見た蒼


求めて、欲して、やっと見つけた

時が止まった気さえする


次の瞬間足場が崩れた

俺は風榎に手を伸ばす

けれどそれは少しの差で届かなくて、掴んだのは空気だけ


もう離さないって決めた筈なのに

俺は拳をただ握りしめて風榎の名前を呼んだ


落ちていく風榎

すぐに煙で見えなくなる





「ぎ、銀さァァァァァアアん!!!みんなァァァアア!!!ッ風榎姉ェェエエ!!!!!」

「…………風榎を知ってるの?」

「っ誰がお前らなんかに!!」

「早く………言えよ」

「ちょ、団長、気持ちは分かるがちっとは抑えてくれよ、なんのために来たと思ってんだ、すっとこどっこい」

「答えればいいだけの話だろ」

「……頼むから答えてくれよな、」

「……………風榎姉は死神太夫率いる"百華"の副頭だ!!お前らなんか、風榎姉がぶっとばしてくれるんだからな!!!?」

「………ははっ、ははは……!」

「?だ、団長?」

「守りたいもの、ってやつができたみたいだネ……、あははは!!」

「ひっ、」

「あーあ、団長がとうとう狂っちまったよ」





言ってた守りたいものができたんだネ

けどネ、風榎に似合うのは俺の隣

それは変わらないんだ、今も昔も


守りたいものがあるから俺の隣に来れないって言うんならさ、




「全部俺が壊しちゃえばいいんだヨ」





狂わせたのは風榎だ





































兎と執着

((風榎、この団長をどうにかしてくれよ))








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