あはれとも、

□碌幕
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 神威SIDE





ちょっと昔話をしよう


俺には昔から…っていうか気が付いたらいつも隣にいた奴がいた

世間でいう幼なじみってやつ

名前は風榎


夜兎特有の白い肌に闇みたいに真っ黒の髪

あと月みたいに金色の瞳と俺たちとはまた違う蒼い瞳

綺麗なのに風榎はその左右違う瞳が嫌いらしくいつも左目に眼帯をしてる

話し方は男っぽい


俺はそんな風榎が好きだ

理由?

そんなの分かんない

ただ惚れた


俺は強い奴が好きだ

風榎が闘ってるところは俺でさえ何回かしかない

そこでさえ一瞬にして終わったから数秒だけ

風榎の実力は謎

けど弱くても守ってやりたいと思えたのは風榎が初めてだった


アイツの片腕を奪って、俺は星を出る

その時も隣に風榎がいた

いろんな星を回ってたら春雨からスカウトが来て、風榎も一緒にっていう条件で入団

それから、気が付いたら団長になってた

風榎はまた隣に


春雨内で闘わない風榎の話はよく出る

風榎の文句を言う奴もたまにいたけど、そいつらは一瞬で黙らせた

ある日俺は風榎になんで闘わないか聞いたことがある

その答えにはビックリした


守りたいもの?

俺に守られてたらいいじゃないか

そんなもののために風榎が傷つくなんて許せないヨ


風榎の考え方はいまいち分かんなかった

俺たちはただ自分を満たすために闘う

俺でいう風榎みたいなもの?

風榎はなにも守らなくていい

余計に分からなくなった


そんなまたある日

春雨の偉いさん?ってやつに呼ばれた

嫌々行けば、内容は風榎のこと

なんか上の奴の1人がたまたま見た風榎を気に入ったとかで、風榎が闘わない噂もあったから事務の方へのスカウト


は?風榎をお前らなんかにやるわけないだろ

でも従わなかったらうっとうしい

変な任務を入れられちゃ困る


そこで俺は考えた

風榎を一回脱団させて、フリーとして傍に置けばいい

だから風榎に脱団命令を出した

傍にいてもらうことは明日にでも言えばいいか


部屋から出て行く風榎を見ながらそんなことを考える

さすがに今日一日で出て行くことはないだろ



そう考えたことを俺はすぐに後悔することになる

































「風榎、……………?」





さすがに皆で食べるのは気まずいか、なんて考えて夜ご飯を風榎の部屋まで持って行った俺

ホントにこの俺がここまでするなんて風榎だけだ


(両手塞がってるから足で)ノックしても返事はなし

声を掛けながら扉を開ける


思わず持ってたお盆を落とした

熱いスープが足にかかったことなんて気にしない


部屋には何もなかった

備え付けのベッド以外何もない

ほんわりと風榎の匂いが残ってるだけ


俺は思い浮かんだ最悪の事態を想定して小型宇宙船とかがある倉庫に走った

途中何人か踏んだかもしれないけど今はそれどころじゃない

久しぶりにこんなに走った気がする

思い浮かんだこの考えが真実でないことを祈りながらただ走った




倉庫に着いた俺はただ絶望する

小型宇宙船の数が1つないこと、宇宙船用出入り口が開いた痕跡があるのは見てすぐに分かった

柄にもなく足に力が入らなくなってその場に崩れ落ちる

母さんがいなくなって泣き崩れてた神楽の気持ちがやっと分かった気がした



























兎と兎

(生まれて初めて泣いた)










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