あはれとも、
□伍幕
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あれから、晴太以外の落ちた私たちはなんとか生き延びたらしい
神威や阿伏兎たちは追ってこない
そりゃそうか、私なんて脱団させられた人間なんだし
晴太はきっと前に頭から聞いた件に巻き込まれてる
神威は子どもを殺すのは好きじゃないからきっと無事だろう
各々落ちた拍子とかに打撲やらかすり傷やらができているから、贔屓にしてる近くの茶屋の裏に通してもらって怪我の治療をすることに
こっちに来る途中の疑惑を含んだ視線は気付いてたけど、一旦放っておいた
けれど、裏の畳に座りながら治療や処置があらかた終わって一息ついたところで意を決したように神楽が私を見るから、さすがにもう説明しなくちゃいけないらしい
嫌なわけでも隠すわけでもないけれど、面倒だ
「そないに見られなんしたら、あっちも照れるでありんすよ?」
「!え、あ、すみません・・・」
「それとも、夜兎のあちきが此処にいるのが不思議でざんすか?」
「っ風榎姉がなんでここにいるアルか!!?だって風榎姉は・・・!!」
「あちきは、神威についていきなんした?」
「そ、それに!その格好と話し方、どうしたんアルか!!!っもう、ワタシわけが分かんないネ・・・・・・!」
「神楽ちゃん・・・。あっ、あの、さっきは不躾に見てしまってすみません。ひとつずつ状況を整理していってもいいでしょうか?」
「ようざんす」
「まず、神威ってどなたですか?」
「さっきの包帯野郎、私のバカ兄貴アルヨ」
「兄貴ィィイ?!」
「かっ神楽ちゃんのお兄さん?!」
「そうネ。そんでそこにいる風榎姉は神威に着いていったアル」
「その兄貴についていったってどういう意味だ、神楽?」
「そのままの意味ネ」
「あちきと神威は夜兎の星での昔馴染みでありんす。神楽とはその時に知り合いんした。神威はある時あることがきっかけで星を出て行くことになりんして、それについていったのがあちきでござりんすよ。ただ昔馴染みの神威が心配でついていっただけざんす」
「さっきの奴らは誰なんだ?知り合いぽかったけど」
「あちきらは星を出てから春雨に勧誘されんして、間髪入れるまもなく神威は団長になりんした。その時の同僚達でありんすね」
「でもなんで風榎、さんはその・・・、吉原に?」
「ふふ、別に好かねえことでもないから気に病む必要はござりんせん。あちきは神威に捨てられたざんす」
「え?」
「あちきは夜兎で春雨でありながら神威のような、闘いを求めるような獣ではござりんせん。闘う意味が分かりんせんした。闘わなかったのでありんす。そんなあちきを見て、神威はあちきを軽々と捨てなんした。悲しくはなかったでござりんすよ、今思えば、かの場所にいるとあちきの心は死んだままだったでありんすから。その時偶然地球に来んして、頭が拾ってくれたんざんす。しんぞ、嘘は言うてござりんせん」
「アイツが風榎姉を捨てた・・・??!」
「ほんざんす、神威にとってあちきはそんな程度だったと言うことでござりんすね」
「だって神威は・・・!!!!!・・・・・・いや、やっぱりなんにもないアル」
「だから、あちきは神威側の裏切り者ではござりんせん、分かっておくんなしたか?今のあちきは、拾ってくれんした頭や姐さん方を守りたい、ただのこの街の自警団副頭でありんす。あちきの守りたいものを守るためにあちきは副頭になりんした」
「そういうことだったんですね・・・」
「風榎、お主そこまでわっちらのことを想って・・・・・・、」
「頭、あちきは吉原から出ていきんせん。あちきの命は頭と共にありんす」
頭を真っ直ぐと見つめる
もう逃げろなんて言わせない
私は大切なものを守るんだ
突然間に銀さんが入ってきて、私の頭をがしがしと撫ぜる
驚いて、立っている銀さんを見上げた
「っつーことだ。風榎さんを連れて逃げる依頼はなしっつーことで。こんな可愛子ちゃんにここまで想われてんだ、妬けちまうな。アンタのそれはただの優しさに見えた自分のエゴだ、コイツがどんだけの想いで傍にいんのか考えてやれよ。近くにいんだからもっと話せばいいだろうがよ」
「・・・うるさいぞ、天パ。言われんでも分かっておる」
「・・・頭、」
「なんだ、風榎?」
「あちきは1人で本楼に行きなんす」
「!一緒に行けばいいじゃろう、何を言うておる」
「戦力は分散したほうがようざんす。それに、あちきは姐さん方に怪我がないようにも動くつもりでありんすから、きっと一緒に行動しても別行動になるのはよくいうもの。それなら元より別行動で撹乱いたしんしょう」
「・・・・・・分かった。気をつけるんじゃぞ」
「風榎姉、後でもっと詳しく聞かせてもらうからネ!!」
「気をつけてくださいね、えっと、風榎さん」
「無理だけはすんなよ。なんかあったらすぐに銀さんを呼べ」
「さっきから風榎姉に対して銀ちゃん気持ち悪いアル。きしょいアル。変態ネ」
「今格好つけてたじゃん!!?なんでそんなこというの神楽ちゃん!!!!?」
「うふふ、頭も、御3方も、ご武運を。頭、次にお会いする時は日輪様も一緒に笑いんしょう」
「もちろんじゃ」
私は本楼へ向かった