あはれとも、
□肆幕
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「風榎、」
「?はい頭、何でしょう?」
銀色の、"侍"というものに逢ってから時が経った
私と頭は百華の訓練終わりに、吉原全体を見渡せるぐらい高いところにある太いパイプみたいな所にいる
もうちょっとあっちにある通気口から私は初めて吉原に入った
その時は、この華やかな景色にただ魅入ったのを覚えてる
でも、宝物ができたこの街はその時以上に輝いて見えた
きっと頭や姐さんに言ったら嫌な気持ちにさせてしまうんだろうけど
「・・・わっちは吉原を裏切るかもしれん。わっちの生きる理由は日輪にあるからな。・・・風榎、その時おんしは、」
「私の生きる理由は頭にあります。吉原に執着なんて無い、私は"あの時"から頭の下僕」
「風榎、」
頭はもう一度私の名前を呼んで私を見る
いつもは凛としているその瞳は今だけは少し揺れているように感じた
頭はそれからすぐに視線を吉原に目線を戻して、いつもみたいに煙管をふかす
けれど、その指先はかすかに震えていて、吉原を見ているようで、遠くのもっと違う何かを見ているみたいだ
頭は何かを決めたみたいな顔をしてる
ならば私は、
「あちきの命は頭と共に。この命、燃え尽きることも、頭のためとあらばあちきに悔いなんて・・・・・・、塵一つもないでありんすよ」
「・・・・・・そうか」
頭はとても綺麗に、でもとても哀しそうに私に微笑んだ