あはれとも、
□壱幕
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「うぎゃああぁあ!!!」
男が首から血を吹き出して倒れた
それを見て周りにいた仲間の奴らが刀に手をかける
「きっ貴様、噂の、"百華"副頭か・・・!!」
「我々に手を出して、生きておれると思っておるのか?!」
「噂?どんな噂でありんすか。ほんに頓痴気だこと。覚えておきなんし、吉原(ここ)で街(うえ)のルールは通じない、お主さんらがどれだけ街(上)で偉いお人だってここじゃあただの武左でござりんす。それが分からないお主さんらは・・・いりんせん」
「!覚えておれよ・・・!!?」
「ほんに負け犬みたい」
男たちが尻尾を巻いて逃げていく
今週に入って何度目だ
男達が絡んでいた姐さんのもとに駆け寄る
ああ、見る限り怪我はなさそうでよかった
百華として人と接する時は、癖で廓言葉がでるようになった
ここに馴染んできたみたいで、私もここの一員なようで嬉しい
「風榎!!」
「蛍華姐さんとほかの姐さん方、お怪我はありませんか?」
「あぁ、大丈夫だよ。いつもありがとうね、最近あぁいうのが多いんだよ」
「私はこれが仕事ですから。怪我が無くてよかったです」
「まぁた可愛いこと言ってくれるじゃないか!」
「ちょっ、」
最近やたらと遊女に絡む輩が多い
自分の肩書きを名乗っては、特別待遇を迫る輩がいるがこっちとしては鬱陶しいほかこの上ないし、排除の対象だ
例が今の奴らみたいの
姐さんが頭を撫でてくれる
本当に白魚のような手
私の血で汚れた手とは大違い
けれど、姐さん達を守る為ならば、嫌だとは思わなかった
姐さんたちは余所者の私を妹同然に扱ってくれる
私にとって姐さんたちは家族も同然
むしろ家族を知らない私にとってはそれ以上だった
「……風榎、」
「!!頭!」
「月詠様!」
「風榎、例の客が呼んでおる」
「!ほんだんすかえ。今行きなんす」
「あぁ、頼んだぞ」
頭は私の太陽
頭自身はそれを否定するけど、私の中では太陽だ
2年前、私を拾ってくれた時も、皆の中に私を入れてくれた時も、全部輝いて見えた
「じゃあまた後でね、風榎!」
「後でまた話そうじゃないか」
「ほら行っといで!」
「っはい!!」
この笑顔を見るだけでなんでもできる気がする
やっと見つけた
やっと護りたいものができた
私は護りたいもののために闘うよ、神威
兎の宝物(あぁ、やっぱり風榎は可愛いねぇ)
(その旦那が間夫だったりするのかねえ)