愛,哀,あい

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「あ、ここ間違ってるよ」

「マジかよ!?やっぱ数学わかんねー…」





数学の時間

教科書を見せてもらいながら受ける授業3つめ

途中の休み時間は周りの子とか慈郎くんと話してたりした

みんなフレンドリーで安心


隣で頑張ってうんうん唸りながら問題を解いてる宍戸くん

たしかに応用だから少し難しい

でも四天にいた頃にこの問題とよく似たやつをしてるからギリギリ分かった





「市川って頭いーのか?さっきから正解してばっかだしよ」

「四天の方が進むの早いらしくてさきにやってるからだよ!私だいたい平均ぐらいだから」

「でも1回勉強しただけでり理解できんのってすげーと思うぜ」

「そうかな?ありがとう!」

「その頭分けてほしいわ」

「私そんなに頭良くないからどうせなら違う人に分けてもらってよ!これ以上アホにしないで!」

「そんな本気で答えんなよ」


「そこうるさいぞー」


「!ぁ、すみません、」

「市川に先生の名前とか教えてやってたり分かんないんとこ教えてもらってたんスけどー」

「…声のボリューム少し抑えろよ」

「ウィーッス」




 キーンコーンカーンコーン




「じゃあ宿題はさっき配ったプリントだ。礼は省略、宿題忘れるなよー」





先生がチョークとかを入れた箱を持って教室から出ていった

ふと横に視線を向ける

少し悪そうに笑う宍戸くんに、私もつられて笑っちゃう





「嘘じゃないけどホントではないよね」

「あの先生の顔見たかよ?すっげー笑えた!」

「さっきの、宍戸ナイス!あんな顔初めて見たよ!」

「そんなこと言っていいのかよ、学級委員。でもだよな!!」





前の席の学級委員をしてる櫻井志帆ちゃん

綺麗な黒髪に、整った顔

絶対モテてると思う

そんな志帆ちゃんの本命は跡部くんらしい

それを話す志帆ちゃんはホントに可愛かったなぁ





「うし、次で午前中の授業終わりだよな?それに国語だし寝るか」

「それはさすがに許せないからね」

「まけとけよ、学級委員!」

「はい却下」

「あともう1時限なんだから頑張ろうよ!」

「…しゃーねーなぁ」




 バンッッッ




「想香さ!!、ん、………」

「え、あ、長太郎くん、?」





すごく大きな音がして扉が開いた

そっちに慌てて向けば肩で息してる長太郎くん

私の名前を大きな声を呼んだと思ったら、だんだん声が小さくなっていく

クラスの子達も不思議そうに私と長太郎くんを見比べて、また不思議そうな顔をした

宍戸くんも長太郎くんの名前を紡ぎながら立ち上がってる

私も立ち上がって俯く長太郎くんに駆け寄った





「どっどうしたの、長太郎くん……?」

「…んで、」

「え?」

「いや、なんでもない!心配だったから見に来たよ、想香さん」

「え、あっそうなんだ!そんな心配しなくても大丈夫だよ?」

「心配だったんだから仕方ない」





上げた顔はいつもと変わらない笑顔で、なんだか緊張の糸がプツンと切れた

一体なにに緊張してたんだろう

クラスの皆も急に止まってた時間が動き始めたみたいにまた騒がしくなる


そしたら急に頭に重みを感じた

顔だけでそっちを見れば、私の頭に腕をのせてる宍戸くん

また楽しそうに笑ってる





「ちょ、重いよ、宍戸くん!」

「んな体重かけてねーだろ?」

「重いものは重いからね」

「悪ぃって!」

「もう、」


「…想香さん」


「なぁに?」

「昼ごはん、一緒に食べない?」

「昼ごはん?」

「うん!噴水の近くのベンチでどうかなって。学校の案内がてらに」

「たしかにそれいいな!櫻井も誘ってよ、」

「そうだね、すごく楽しそう!」

「今回は、」

「え?」

「……んーん、なんにもないよ。じゃあまたあとで来るから。…ではまた、宍戸さん」

「おぉ、またな」

「あとでねー!」





私の頭を軽く触ってからまた帰っていった長太郎くん

なんだか最後に見た笑顔はいつもと違うような気がした

目がおかしくなったかな

隣の宍戸くんを見上げると、ちょうど宍戸くんもこっちを向いて目が合う

ちょっとの間見つめあって、まあ2人一緒に笑った





「なんでこんなにハモっちゃうんだろうね!」

「わっかんねーよ!でも長太郎、どうしたんだろうな、市川はなんか知ってるか?」

「ううん、分かんないんや…」

「そうだよなー。…じゃあ弁当のために国語頑張るか」

「うん!」

































(…結局寝てるじゃん)







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