愛,哀,あい

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 長太郎SIDE





それから、想香さんと一緒に近くのファミレスに行ったら誰かに名前を呼ばれた

そっちを見るとテニス部の先輩たち


…シクった

そうだ、食べにいくって言ってたじゃん

まさかここだったなんて

想香さんにはまだ気が付いてないらしい

俺は想香さんを背中に隠すようにして立つ





「……想香さん、店変えよっか」

「?え、部活の先輩なんでしょ?いいの?」

「うん、だっていきなり知らない人と食べるの嫌でしょ」

「あっありがとう」

「……ちょっと挨拶だけしてくるからここで待っててくれる?」

「うん!」





ごめん

想香さんが思ってくれてるみたいに、俺は優しくないし白くない


俺は明らかに女子の目を引いてるテーブルに向かう





「なんだ、鳳。俺様からの誘いを断っておいて1人でお食事か?」

「…違いますって」

「ほーう?」


「姉ちゃん、可愛ええなぁ?もしかして1人?」

「え、あ………!」


「!!想香さん!!!!」





最初に気付けば良かった

最初に絡んでくる筈の忍足さんがいないことに


耳に届いた、か弱い声

俺は先輩たちの目すら気にせず想香さんの方に走って、忍足さんと想香さんの間に割り込む





「ちょうた、ろうくん……」

「あれ?なんで鳳?」

「…とりあえず離れてください」

「分かった、分かったから。んな睨まんでええやんか…」





胸の前で両手を振りながら離れた

後ろで小さく震えてるのが分かる





「大丈夫?」

「…っうん、」

「と、とりあえず俺たちの席おいでや。店員さんも困っとるし」

「………はい」





視界の端に店員の困る表情

正直想香さん以外どうでもいい

てかアンタのせいだろ

でも想香さんがコクコクと頷くのを見て仕方なく了承する


想香さんの肩を抱きながら先輩たちの席に向かえば、呆れたような顔をされた





「なんだ、彼女と一緒か」

「鳳も隅におけないな、くそくそ!」

「…違いますって!」

「ちょ、長太郎くんの従兄弟の市川 想香です」

「長太郎、お前に従兄弟なんていたんだな」

「はい、いたんです」





想香さんだけは宍戸さんでも渡せない

俺は10人席の空いてる席に座る

当たり前だけど、俺たちは横に並んで座ったけどなにか文句でも?





「紹介が遅れたな、俺たちは鳳と同じテニス部で、ちなみに俺は部長の跡部景吾だ。こっちは樺地宗弘」

「…ウス、」

「俺は忍足侑士!さっきはすまんなぁ」

「向日岳人だぜ!よろしくみそ!」

「芥川慈郎っていうんだ!よろしくだC!」

「…日吉若です」

「俺は宍戸亮!長太郎とはダブルスでペア組んでるんだぜ?よろしくな!」

「よろしくお願いします」

「見ない顔だけど、市川さんはこの辺に住んでるの?」

「最近引っ越してきたんです!」

「どこからなんだ?」

「…大阪ですよ」

「大阪……、って言ったら白石たちの四天宝寺か」

「その四天宝寺に通ってました」

「えらい偶然やなぁ!」

「でも関西弁じゃないんだな!」

「私、元々こっちの山吹に住んでたんですけど、数ヶ月前にあっちに行ったんです。だから標準語なんですよ」

「引っ越し多いんだな!ちなみに今も山吹に住んでるのか?」

「今は長太郎くんの家です」


「「「「「「「は?」」」」」」」





一斉に俺の方を見た先輩たち

さっきまで興味なさげに聞いてた日吉まで

想香さんだけ不思議そうに首を傾げてる

やっぱり可愛いな、なんて場違いな事を考えるくらい





「いいい一緒に住んでんの………?!」

「?はい」

「こんな可愛い子と同じ屋根の下に………?!」

「え、可愛くなんてないですから」

「無自覚かよ!」





想香さんが早々に見つかってしまって苛つく
けど羨ましがる先輩たちを見て、優越感に浸れるのはたしか





「……長太郎、」

「?なんですか?」





想香さんとは反対の隣の席に座ってた宍戸さんが俺だけに聞こえるように囁いた





「…お前がどんな女見ても惚れなかった理由、やっと分かったわ」





正直理解されても全く嬉しくないです、宍戸さん


























((ほかの男と話してる想香さんを見るのは、やっぱり苛つく))








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