愛,哀,あい

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「おぉ、ちゃんと来てて偉いやん」





男子テニス部マネージャー

それが私の肩書き


私が倉庫からボールを出していると背後から聞こえた突然の声

振り向かなくても誰かなんて分かる





「…白石くん、」

「ほな朝の一蹴りといこ、かっ!!」

「!ゲホッ、ゲホ…!!!い、今私、アナタたちの用意……してあげてるんだけど…?」

「んー?そんなんマネージャーやから当たり前とちゃうん?」

「マネージャーの仕事の邪魔しちゃいけないって知らないの?」

「ハハ、最近口も達者になってきよったなぁ」





白石くんに蹴られたお腹が痛む

女の子のお腹蹴るって男としてどうなんだよ


私は貼り付けたような笑みを浮かべている白石くんの横をボールの籠を持ちながら通り過ぎる




「退部のご予定はー?」

「アンタたちが辞めさせてくれないんじゃん」

「よう分かっとる!」





顔も見ずに続くやりとり

もうこんな日常慣れた


私がお父さんの仕事の関係で東京の山吹から越してきたのはほんの数ヶ月前

幼稚園から一緒だった幼なじみたちと別れ、来たのは大阪の四天宝寺

山吹でもマネージャーをしてた私はすぐにマネージャーになった

そりゃファンクラブの子と最初はトラブルもあったけど、気が付けば仲良くなってた

テニス部の皆も個性豊かで、ここに来てよかったって本気で思えた


でもクラスに馴染めた頃

テニス部(レギュラー)の皆が変わった

私に暴力を振るうようになり、諸謂"虐め"というものが始まった

原因なんて分からない

ある日突然だったから

テニス部のファンクラブの皆は、戸惑いながらも心配してくれる
(まぁテニス部が怖くて裏でだけどね)

クラスの皆は変わることなく私に接してくれる

平部員くんたちもいつも通り


もちろん退部しようと何度も申し出た

けどテニス部が許してくれなかった

どうせいい玩具が見つかったから逃がしたくない、なんて思ってるんだろう





「ほな練習再開や!」





白石くんのその言葉を聞いてから置いておいたドリンクとタオルを取りに行く

入れ替わって休憩に入る平部員たちのドリンクが入ったジャグとタオルを入れた籠を帰ってきたらすぐ持っていけるように準備してからコートまで走る


空になったボトルと使用済みタオルが入れられた籠を持って足早にコートを出ようとした瞬間激痛が背中に走った





「!!いだっ、」

「あー、すんませんミスってまいましたわ」





あまりの痛さに籠を落としてしまった

ほんのり歪む視界に、ボール

後ろを少し振り向けば少し口角を上げている大嫌いな後輩の財前くん

謝るんならちゃんと謝れ

てかあからさまだな、オイ





「ボール、返す、ねっ!!!!」

「っ!!」





足元に落ちてたボールを拾い上げ、ムカつくソイツの眉間に思いっきり投げてやる

あ、ジャストミートだ


私は悶える後輩を放って急いで部室に向かう

部室に着けば、タオルを洗濯機に入れて、ボトルを流し台に置き、急いで平部員の皆の所に行く





「待たせちゃってごめん!ドリンクだよ!」

「あ、来た来た」

「遅かったなー」

「ごめんって」





私が唯一部活で和める時間

ちなみにここにいる皆のメアドはゲット済みでとっても仲良し
(レギュラーの方は消したけど)




「あ、さっきの財前の見てたで!」

「ホンマウケたわ!!」

「その前に私の心配は、ヤロー共!?」

「あはは、分かっとるって、大丈夫やった?」

「……次から藤縞くんだけドリンク無しね」

「は?!すまんて想香!!」

「うわ藤縞先輩アホやー」

「うっさいわ!!」


「……いつまで休憩してんねん、早よ練習せんかい」

「しっ白石先輩……!」





いつのまにか私の後ろにいた白石くん

ビックリした…





「まだ休憩時間で…!!」

「は?てかお前は調子乗ってなに媚売ってんねん、気色悪」

「……」

「お前らもそんなんやからレギュラーに上がられへんねん」

「「「っ……」」」

「!白石くん、それは…!!!」

「なんや、文句あんの?」

「……早くコート戻りなよ、練習しないとレギュラー落ちるよ」

「ハ…、」





白石くんはコートに戻っていく

その場にいた私たちには気まずい空気が流れた





「…なんて顔してんの!あ、もうすぐ休憩終わっちゃうね…。早くあんな奴ら抜かしてレギュラーになってよね、皆!!」

「「「!はい/おん!!!」」」





嗚呼、気分が悪い







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