novel

□カゲロウ パロ
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緑間はそこで目を覚ます。

「全く嫌な夢を見たのだよ」
眼鏡をかけ、おは朝の占いを見る。

「念の為、アイツのラッキーアイテムも持っていくのだよ」
そうして待ち合わせの公園へ向かう。

「あっ真ちゃーん!って今日は犬のぬいぐるみでございますか…」
「そうなのだよ。 …これ」
「ん? 風鈴? 俺のラッキーアイテム?!うわっ! 超?嬉しいのだよ!」
「調子に乗るな。 気が向いただけなのだよ。 あと、真似をするな」
「照れんなってww」
「…高尾ぉ…」
「すいませんでした。 怒るなよ、エース様?」
いつもどおりの会話をし、バスケをする。

休憩を取ると高尾が風鈴を鳴らし、

「でもまぁ、夏はキライだしなぁ。風鈴があるだけちょっと、涼しくていいかもな」

高尾の言葉にほんの少し、冷や汗が流れる。

  ガサリ

場の空気に合わない音が鳴る。
猫だ。夢に出てきたあの、赤茶色の猫。

高尾は猫を抱え、なでていた。

不思議な感覚だった。
背筋は凍り、冷や汗が止まらない。


これでは昨日の夢と、同じではないか、と。

「あっ、待てよ」
「!」

逃げ出した猫を追うとした高尾を引きとめいった。

「今日はもう帰るのだよ」
「え…でも…」
「いいから帰るぞ」

半ば強引に高尾の手を掴みショッピングモールの道に行く。が、


「…真ちゃんは、エース様は俺が守るからな」

道に抜けたとき高尾がぼそりと何かを言った。
そして緑間が振り返る数秒前に、周りの人はみな、上を見上げ口をあけていた。

何か肉のようなものが裂け、硬いものが折れる音。
緑間の目に飛び込んできたのは、人形のようにだらけている高尾の体。
耳を劈くような悲鳴と、壊れた風鈴の音が木々の隙間で空回りして、脳に木霊する。

これも夢だと思いたかった。だがこの考えも昨夜の夢のように粉々に粉砕される。


  『勿論、夢でもないよ』

ワザとらしい笑みを作った陽炎が囁いた。

遠のく意識の向こう側で、いつものようなイタズラな笑みではなく、優しげな笑みを浮かべ、でもどこかを睨んでいる高尾が小さく口を動かし何かを言ったような気がした。
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