novel

□カゲロウ パロ
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8月15日 午後12時半を過ぎた頃、緑髪の青年ー緑間真太郎ーは携帯に届いた一通のメールと睨み合っていた。
メールの文章には、

「真ちゃーん。バスケやろーぜ!」
と、書かれてあった。

緑間はこめかみを押さえ、ため息をつく。
こんな長時間日に当たっていたら、日射病間違いなしの日にコイツはアホなのか…いやアホというよりバカだ、コイツの名前は今日から、バカ尾だ。

そんなことを思っていると、いつの間にか公園、ストバスノコートに来ていた。
結局は緑間もバスケバk…バスケが大好きなのだ。

「真ちゃーん!こっちこっち」
ブランコに座ったバk…高尾がこちらに手を振ってくる。

「お前はバカなのだよ。こんな日にバスケをやろうとは」
「そういう真ちゃんもちゃんと来たじゃん、ははっ照れんなって」
「…お前のわがままに付き合っただけなのだよ」
「それはそれで、ありがとー」

調子のいい奴だ、と緑間が思っていると高尾の膝に乗った、赤茶色の猫が目に入る。

「高尾その猫は?」
「んー?可愛いだろー オッドアイなんてめずらしーだろーw」
「…俺は猫は好かんのだよ」
「じゃーバスケしますか」

バスケをし始めても、高尾のおしゃべりは止まらず、よくバスケをしながら喋れるものだ
と感心してしまった。


「でもまぁ、夏はキライかな…」


高尾がやっとシュートを決めるとふてぶてしく呟いた。

「嫌いなら、家で涼んでいれば良かっただろう?」
「うん?夏は嫌いだけど、バスケは好きだから…かな?」
「…休憩するのだよ」

ブランコに戻るとまた高尾は猫を撫で始めた。
だが、

「あっ、オイ!」
高尾の腕からスルリと猫が逃げ出した。

「ちょっと待っててね」

何も追いかける必要はないだろうと思った緑間の目に映ったのは、

  −赤に変わった、信号機ー

通りから、バッと通ったトラックが、高尾の細い体を轢き摺って鳴き叫ぶ。

「たかっーーー…!!」
叫んだつもりだった… 名前を呼んだつもりだった。
緑間の声は、高尾の香りと、アスファルトに焼かれた血の匂いが混ざり合ったものにむせ返り、かき消された。
嘘だと思いたかったが、次の瞬間それは幻想に終わる。



  『嘘じゃないよ』


高尾かすらも解らなくなった死体のそばでオッドアイの少年 ー陽炎ー が此方を見つめ、嗤っていた。
夏の水色と混ざり合った蝉の音に
  …−すべて眩んだー…
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