BOOK 黒子のバスケ/ハイキュー!!
□回り道
1ページ/1ページ
「黒尾ー、家庭科でアップルパイ焼いたからあげるよ。あ、研磨も一緒に食べてー!!」
大体いつも部活が始まる少し前に、俺とクロに差し入れをくれるなつき
一応先輩でクロと同じクラスの人。
本人も呼び捨てでいいて言うし、俺自体あんまりそういうめんどくさいことは気にしたくない
なつきは結構さっぱりとしてる人で明るくて、結構俺にとって親しみやすい
だから俺は好きになったのかもしれない
好きと自覚してからは早い
些細なことがすごく気になってしまう
例えば、なつきと俺は1対1でちゃんと会話をしたことがなかったり、差し入れもクロにあげるついでって感じがする。
学年が違うから廊下とかですれ違うことも少ない
けれど、たまに練習を見ているなつきをチラリと見ると目があったりする
一瞬戸惑った顔をしてから笑って手を振ってくれたりするから嬉しい
でも、目が合わないときは大抵クロを見ていることも知っている
なつきにとって俺はクロの幼馴染だって言う意外に遠い関係以外にはなれないのかな
そんなある日、部活前の部室でクロとなつきの声が聞こえてきた
なんとなく入るに入れなくて、ドアの前で聞き耳を立てる
「あのなぁ、好きなら好きって言えよ。分かんねぇだろ」
「は?言えるわけないじゃん!!だってわたしのこと絶対に眼中にないと思うもん」
「んなこと分かんねぇだろーが。お前はアイツじゃない」
最初のクロのセリフにとうとうなつきが告白したのかと思ったけど、続きの話を聞いている限りそんな感じは微塵も見れなかった
そして新たな疑問が生まれる
アイツって誰?
俺かなって期待したい。クロじゃないなら可能性はある…と思う。
けれど、俺はなつきの普段の人間関係とか知らないし……
俺はもう少し情報が知りたくなってもう一度聞き耳を立てることにした
「確かに黒尾の方がきっといろんなこと分かってると思うけどさー、ほんと自信無いんだって。」
「差し入れも俺が居ねぇと満足にできてねぇもんな。もう普通に仲良くなっただろ、明日あたりアイツにだけやれば?」
「…それはムリ。料理上手い自信無いし」
「あー、それならこの間のアップルパイは美味しいって喜んでた。」
最後のクロのセリフを聞いて、俺はドアノブに手をかけ、ドアを開けた
そこには、俺の顔を見てどんどん顔を赤くするなつきとすごく楽しそうなニヤニヤとした笑いを浮かべるクロが居た
「ねぇ、ちょっと…。」
「え?え?え?ちょっと、研磨…あのいつから聞いてた?」と軽くパニックになってるなつきの腕を掴むと「5分くらい前から」とだけ答えて体育倉庫の前へと行った
「「あの…」さ」
倉庫の前について話を切り出そうとしたとき、全く同じタイミングで俺となつきが言葉を被らせた
いつもなら、相手に先に言葉を譲るけど今回は引けないと思って俺は続けた
「あのさ…アップルパイの差し入れって俺とクロ以外にあげた…?」
俺の質問を聞いて、あとには引けないと思ったのかなつきは俯いたまま素直に首を横に振った
「そっか…あれ、美味しかったよ。」
「ありがとう…」
「だからさ、また俺に焼いてくれない?今度は俺だけのために」
その瞬間、なつきが俯いていた顔を上げて俺を見た
「俺、好き……だからさ」
「知ってる。黒尾から聞いたの。アップルパイが好物だって。」
そう返されて、なつきが勘違いしてることに気付く
「そうじゃなくて、俺がなつきのこと好きだから、クロの分はもういらない。」
「・・・え?」
今度は伝わったかな、となつきを見れば信じられないとでも言うような顔をして俺を見てた
それから嬉しそうにして「うん!!」っていつものなつきらしい返事をくれた
「俺、なつきってクロのこと好きなのかと思ってた。」
「違うよ!!でも、研磨って黒尾と仲いいから知り合いになるのも差し入れも全部手伝ってもらった…かな。てことは、わたしたちこ恋のキューピットって黒尾…?」
「何それ、嫌だ」