BOOK 薄桜鬼/K
□想いは同じなのに…
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「好きです、沖田さん」
寒い冬の夜になつきちゃんは僕の部屋に来て、そう言った
「なぁーに、なつきちゃん。面白い冗談?」
最低なことを言っている自覚はある
なつきちゃんが冗談でこんなことを言うはずがないことも
でも、僕はどうしても受け入れてはいけなかった
だから、笑って誤魔化した
「本気だったらごめんね、笑っちゃって。でも、僕はなつきちゃんのこと妹として見てきたから」
苦笑しながらも手を伸ばしてなつきちゃんの頭を撫でる
「いいんです、伝えたかっただけなので。これからも今まで通り全力で応援していきますね」
ちょっと寂しさの入った笑顔を浮かべるとそのまま頭を下げ、なつきちゃんは部屋を去っていった
潤んでいた瞳も、頬の赤らんだ顔も
僕は見なかったことにした
僕には愛情も笑顔も涙も必要ない
ただ、新選組の刀となり目の前の敵を斬るだけだ
それに、僕よりも長く大切にしてくれる人が彼女の前に現れるだろうしね