♀×ルル

□涙痕
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※薫+L、共犯者設定




















L.L.は泣かない



なぜなら魔女だから



「そもそも泣くという行為は人間のすることだ。魔女の俺が…することでは……ない」



ルルーシュは淋しげな表情で俯く



魔女と呼ばれるようになってからは、泣くという行為自体を忘れていた







すべての始まりを説明するには、あの日に遡(さかのぼ)らなければならない



運命的とも言う出会いを果たした薫とL.L.



薫はある事件に巻き込まれ、カプセルに入っていたL.L.を毒ガスだと思い込んでいた



絶体絶命の薫を庇って心臓を撃たれたL.L.



「私はこんなところで死ななければならないの…?」



その場に倒れたL.L.を助けようとした薫は、剣客警官隊に殺されそうになり咄嗟に念じた



「力が欲しい」と



「力が欲しいのか?」



どこからか声が聞こえる



「力が欲しいのなら俺と契約しろ」



薫の頭の中に何かが流れ込んでくる



「その代償として、俺の願いをひとつだけ叶えろ」



どっちみち、この窮地から逃れるにはこの声に従うしかない



「いいだろう…結ぶぞ!その契約!!」



その力を受け入れる覚悟を決めた



「契約は結ばれた…」



ギアスと言う力を得た薫は、襲い掛かる剣客警官隊を薙(な)ぎ払う



「神谷薫が命じる!貴様達は……散れ!!」



左目から赤い光が放たれ、警官隊全員の大脳皮質まで行き渡る



薫のギアスは相手を強制的に従わせる能力



「イエス、ユアハイネス!」



警官は2人でペアになり、持っていた日本刀で相手の腹を突き刺す



微動すらしない薫の目の前で血飛沫が飛ぶ



確実に息の根を止める為、既に死んでいる1人の警官の右手から刀を奪い急所を狙う



そして迷うことなく首を斬る



薫は実感する



ギアスの力は本物だと



「私は力を手に入れた……だから!」



こうして力を手にした薫は、今までに見せたことのない悪辣(あくらつ)な笑みを浮かべた



自分を庇い、倒れて動かないL.L.が気になりそばに駆け寄る



「貴方…っ!大丈夫なの!?しっかりしてっ!!」



「煩い…少し黙ってくれないか」



何事もなかったかのように起き上がるL.L.を見た薫は驚きを隠せない



「痛みは感じないが…久々に驚いたな」



「なっ…!何、これ……どういうこと?!」



心臓を撃ち抜かれたはずのL.L.は、ケロリとしており、怪我ひとつしていない



突然の出来事で戸惑う薫に、L.L.はある契約を交わしたことを伝える



「お前は力を欲していた。だから与えた、それだけのことだ」



「力って……!一体どーゆーことなのよっ!!」



「簡単に言うと、俺がお前に与えた力はギアスと言う能力だ」



「ギ…ギアス?」



「そう……則(すなわ)ち王の力」



ギアス、今まで聞いたことさえない言葉



「力を与える変わりに、俺の願いをひとつだけ叶えろとも言ったはずだ」



「そうね…確かに貴方は私にそう言った」



頭の中に響いた言葉をそれとなく思い出す



「だが……」



「?」



「これだけは言っておく」



「なっ……何よ」



「王の力は…お前を孤独にする」



何のことだか今の薫にはさっぱり訳がわからない



だが、それほどまでに計り知れない能力だと言うことを察し、息を飲んだ



「それでもいいと言うのなら…」



「私は理解した上で、この力を受け入れた」



世界さえも壊せる力を手に入れ、体中から一瞬にして沸き上がる歓喜に手が震える



「なら構わない。今日から俺とお前は共犯者と言う関係になる」



そういえばまだ自己紹介もしていなかった



「私、神谷薫」



「L.L.だ」



「L.L.、変わった名前ね。もしかして異国の人?」



「別の次元…世界から来た。……とは言っても、お前には到底理解出来ないだろうがな」



この出会いから数日後…



ついに反逆への扉が開かれることを…、人々はまだ知るよしもなかった







その後、L.L.は神谷道場の世話になることとなった



表向きは居候として



だが、その裏では…罪を共有する共犯者として



ゼロとなった薫と行動を共にしていた



「勘違いするな。俺とお前は共犯者」



「…共犯者」



「剣心とお前のような甘ったれた関係じゃない」



契約を交わしたゼロ、もとい薫にそう呟く



「そんなこと……L.L.、貴方と契約を結んだ時から理解してるわ」



L.L.の前だけではゼロとしての仮面をとる



「そうか、ならばいいが…忘れられると俺が困るのでな」



漆黒のマントを脱ぐ薫を凝視し、彼は白いソファーに寝転がる



「L.L.」



「なんだ?」



「貴方、なんで泣いてたの?」



薫がそう尋ねると、L.L.は自分でもよくわからないと首を捻(ひね)った



「さあな」



L.L.は何も知らぬ素振りをした



あらぬことを聞かれて、機嫌を損ねたと思ったのか、聞いてきた薫もそれ以上追及しなかった



自分が薄々気づいている、当の昔に失くした気持ちを敢えて誤魔化(ごまか)した







涙痕



(覆い隠した嘘を振りほどいて、涙も隠さず叫んでしまいたい。)













お題拝借、揺らぎ様


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