スザルルSS

□きみごとぜんぶ抱いてだいて
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※最終回後、ルル生存

目も足も不自由になってしまったルルーシュを、誰にも知られずにひっそりと介護するスザク




















世界中を震撼させ、後の世の歴史に残るゼロレクイエムから、約三ヶ月が経った



「ゼロ様!」



「ゼロォーッ!」



英雄ゼロは、新たに即位されたナナリー・ヴィ・ブリタニア皇帝の補佐をし、過密スケジュールの中、各国を飛び回っている



「ゼロ!ゼロ!ゼロ!」



あちこちから歓声で沸き立つゼロコール



ゼロは各国の人々から大歓迎され、握手やサインも求められるほどの人気者



おかげで日本に帰って来れたのは、出立してから十日後のことだった







高級感溢れる縦長のリムジンで、シンジュクに特設してあるゼロ専用の邸宅に戻る



「お帰りなさいませ、ゼロ様」



ここで雇っている、数十人のメイドや使用人が、日本に帰って来た彼を丁重に出迎える



「今帰った。私がいない間、何か変わったことや問題点はなかったか?」



「はい、特にはございません」



仮面を被っている為、ゼロからは表情が読み取れない



それでも彼は、周りに自分の疲れを見せようとはしなかった



「御苦労だった。今日はもう全員帰っていいぞ」



「お食事は温めれば食べられるようになっていますので…」



「分かった」



メイドや使用人達は、その場から下がると帰り支度をし始める



彼以外の全員が帰ったことを、再度確認すると、スザクは仕事場である書斎へ急ぎ足で向かう



書斎には本棚があり、山積みにされた書類も多めだが、比較的整理されてある



実はその本棚に仕掛けてある、ゼロしか知らない秘密とは



「―――――」



本棚に組み込んである、最先端のプログラムは、ゼロの声紋でしか認識されないようになっている



設定しておいた五文字のパスワードを言い終える



自動で動く回転式になっていて、隠れ家に通じる入口を実に巧妙な手口で隠してあった



狭い通路を通り抜け、突き当たりを左に曲がる



目の前に古びた木製のドアが見える



コンコン、と、二回ほどノックしてから取っ手に手をかけ、そっとドアを開く



車椅子に座り、優しげな口調で出迎えてくれたのは



「お帰り、スザク」



なんと、死んだはずのルルーシュであった



「ただいま、ルルーシュ」



スザクは顔を上げるルルーシュを、ガラス細工を扱うかのように抱きしめる



彼の前でだけでは“枢木スザク”でいることが許される



「だいぶお疲れのようだな。少し、休んだほうがいいんじゃないのか?」



ゼロとなったスザクに久しぶりに会えて、嬉しげなルルーシュは、疲労困憊しているスザクの労(ろう)を、心から労(ねぎら)う



「君に会えた喜びで、長旅の疲れもあっという間に吹っ飛んじゃったよ」



抱きついたまま、スザクは彼の耳元でそう囁(ささや)く



「そうか…」



口元を上げながら、ルルーシュは微かな笑みを零す







さて、世間では、既に死んだはずのルルーシュが、なぜ生きているかについてだが、長くなるので説明は省(はぶ)かせて頂く



最小限の説明でまとめると、スザクが刺した剣先は、ルルーシュの急所である臓器に刺さっておらず、さほど出血も酷くなかった



その後、秘密裏(り)に病院に運ばれ、昏睡状態に陥(おちい)ったが、ブリタニアの最高の医師の執刀のかいあって、息を吹き返し、なんとか“死”と言う最悪の事態は免(まぬが)れたのである



彼はスザクの願いが通じてか、奇跡的に一命を取り留(と)めた



その変わり、父、シャルルにギアスをかけられていたナナリーと同じ状態で、下半身不随になってしまう



さらに、スザクの信頼を破らぬと約束を交わした責任を取り、自ら両目を潰し、二度とギアスを使えなくした



愚かにも、生き延びてしまった代償と引き換えに



ルルーシュの覚悟は、紛(まぎ)れも無く本物だ、という事を見届けたスザクは、彼の世話役を買って出た



「ここまで来た以上……二人で今までの罪を償い、生きていきます」



そして、誰にも見つからない様、書斎と本棚を改良し、ルルーシュがある程度の日常生活を営(いと)なめる、彼専用の安全な隠れ家を作り、今に至る



「ルルーシュ」



「何だ?スザク」



「事前に用意していった、十日分の食事は全部食べちゃった?」



「ああ、おかげさまでな」



目を閉じた今では、完全に視界が見えないルルーシュだったが、日々練習を重ね、やっと一人で食事が出来るようになった



「…スザク」



「どうしたの?調子悪い?それとも、どこか痛む?」



不安げに俯くルルーシュを前に、スザクは心配そうに口を開く



「俺は…なん、で…生きてるんだろう」



ルルーシュの生存は生徒会メンバーはおろか、現皇帝のナナリーにも伝えてない



伝えるような真似をしたらゼロレクイエムは失敗に終わり、生きてると知った民衆が“悪逆皇帝ルルーシュ”を追い詰め、血祭りにあげることは目に見えていた



優しいルルーシュが世界中から忌(い)み嫌われ、大批判の嵐を浴びる



そんなことは絶対に起こしてはならない



世界中の唸(うな)り迫る悪意から、避けては通れないのだから



だからどんなに辛かろうが、涙を呑(の)もうが、一生隠し通さなければならない



「俺が死ぬことで、初めてゼロレクイエムは真の完成を遂げるはずだったのに……」



泣き笑いのような表情で、彼は胸を突き刺す痛みを堪(こら)え言った



「それが、君自身の罰の形だ」



と同時に、スザクも同じ痛みを感じる



「でもっ……僕は嬉しい、よ?」



テノールの声音は微かに震え、泣きそうな目でルルーシュを見遣(や)り



「君が、ここに……僕の、隣に…いて、くれる…だけで」



精一杯の虚勢を張って発せられた言葉が、ルルーシュの鼓膜に響き渡る



「だから、ルルーシュも……」



痛みを堪えて俯くルルーシュの髪に、スザクの手が触れる



彼は自分も泣きそうなのに、懸命に笑って励まそうとする



「……生きて、生きて、一緒に……罪をっ……償って、いこう?」



いたわりの声が、優しく触れる手が、ルルーシュを激情に押し流す



「……スザクっ!」



たまらなくなって、ルルーシュもスザクの体に手を回す



二人の口からは微かな嗚咽(おえつ)が漏れ、まるで溺れる者のように互いの体にしがみついた



思えば、なにもかもが失われていく



今ここに、腕の中にあるあたたかい体さえ、戦いで消え失せていたのかもしれない



ユフィのように



虐殺皇女と罵(ののし)られた、悲しい少女のように



罪悪感、恐怖、悲しみ、失意――



それらががむしゃらな熱に形を変えて、体の中を駆け巡る



瞼(まぶた)が、熱くなる



スザクは相手の頭をそっと引き寄せ、噛みつくように唇を重ねた



涙が頬に触れる



――自分の?



それとも、目を閉じながらも涙を湛(たた)えた彼の?







きみごとぜんぶ抱いてだいて



(紙一重に揺らぐ感情)
















最終話捏造でルル生存ネタです



イメージソングは攻殻2ndGIGのI do

はっきり言って生存ネタは書く気がなかったです



なの、ですが…!



あるスザルルサイト様の落書き絵に触発されて、書いてみたら無駄に長くなりました(苦笑)



こんなシチュエーションもありかなー?と書いてはみたんですが……



二人がさらに救われてない気がするのは、私の気のせいでしょうか…?
















ニルバーナ・闇に溶けた黒猫様


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