スザルルSS

□愛と殺意の境界線
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絶望は君が君自身から解放される為の甘い罠



陥(おちい)れようにも



貶(おとしめ)ようにも



そこには血で認(したた)めた孤独だけが陰欝と残る



かつての親友と向き合ったスザクは、しばし呆然となっていた



だが驚きがさめ、懸念が確信に変わると、どうしようもない怒りがこみあげてきた



「ゼロ!いや……ルルーシュ」



呼び慣れたその名を切り裂くのは、憎しみの刃(やいば)



「なぜユフィを殺した?」



スザクの一言ひとことが耳に突き刺さる



その名を聞くと、呼吸が苦しくなるような気がした



銃口はルルーシュに向けられたまま



裏切りは裏切りを呼び、血は次の血を求める



「………」



残された想いは行き場所を失い、欲望と絶望の狭間で歪んでゆく



「答えろ」



ぞわりと肌を伝うような、一喝に気圧(けお)される



スザクはやり場のない怒りをルルーシュにぶつけた



それは果たして裏切りだったのか?



「俺のギアスが暴走した」



黒白の霧の奥に見たものは…



――悪夢か



それとも呪われた過去か



「暴走?」



スザクは懐疑的に呟く



答えの出ない問いが突き刺さり



「ギアスの持つ膨大な力が増幅されて、次第に制御が効かなくなる」



ギアスによってユーフェミアの人格が崩壊するところを目撃していた



無垢な心は血塗られてゆく――…



これまでその存在を意識したことさえない確固たる現実が、目の前であまりにも脆く崩れ去るさまを



「殺すつもりなんて……なかった」



沈黙を破るようにルルーシュが口をひらいた



苦渋が滲(にじ)む



失われたものの大きさに震え



取り返せぬ夢に吠(ほ)えた夜



自ら進んで呪縛を刻んだルルーシュが渇望した



“ナナリーに優しい世界”を創るために支払わなければならない対価



選ばれた代償はルルーシュの異母兄妹



ユフィやクロヴィスの犠牲が必要だった



――そして、少女の夢は朽ち果て対価は払われた



「でも…!」



接着剤で貼りつけたように、銃をかたく握りしめる指がかすかに震える



「僕から見れば今のお前の存在自体が、どうしようもなく疎(うと)ましい」



スザクの声に含まれた気迫に押され、ルルーシュの反論は宙に浮く



唸り、悪鬼のごとく憤怒(ふんぬ)に歪んでいる



理屈では解っていても



スザクの怒りは収まらず



代償を求め彷徨(さまよ)う



スザクがこれほどの激情をあらわにするところを、ルルーシュはこれまで見たことがなかった



復讐は生き延びる為の糧



悲しみは毒を持つスパイス



僕が君を、君が僕を



互いの互いを愛すように、互いの互いを憎んでいる



この、どうしようもない程の衝動を人はなんと呼ぶのだろう







愛と殺意の境界線



(擦れ違う君の笑顔に心が鈍く痛むのだ)














お題拝借、闇に溶けた黒猫・9円ラフォーレ様


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