スザルルSS
□まどろむ君に安息を
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「今日、家に来ないか?」
普段と変わらない表情でルルーシュに誘われ、スザクは快(こころよ)くその誘いに応じた
軍の仕事を終えクラブハウスに向かう頃には、辺りは暗闇に包まれていた
「ルルーシュ、遅くなってごめん」
「よく来たな」
スザクは玄関で靴を脱ぐとルルーシュの後へ続き、清潔感漂うリビングへ案内される
「あれ?ナナリーは?」
スザクの来訪を笑顔で迎えてくれるナナリーの姿が見当たらない
「ナナリーは友達の家にいる。お泊り会に参加したいらしくてな」
誰よりも妹のナナリーを愛しナナリーの意志を尊重するルルーシュは、兄としてそれなりに心配ではあったが一晩限定で外泊許可を出した
「あと、メイドさんがいたよね。確か咲世子さんって言ったっけ?」
「咲世子さんなら休暇でいない」
咲世子に休暇を出したのは他でもないルルーシュである
いつもルルーシュとナナリーの為に身を粉にして仕えてくれる咲世子の身体を労(いたわ)って出した三日間の休暇
ルルーシュが日頃の感謝の意を込めての、せめてもの配慮だった
「……ってことは」
「お前の想像通り、今日はお前と俺の二人きりだ」
「!」
いきなりの急展開にスザクは思わずたじろいでしまう
「ル、ルルルルーシュッ!」
頬も心なしか赤く染まっている
「どうしたスザク?顔が赤いようだが」
「これってもしかして…君の計画的犯行?」
「さあ、どうだろうな」
そう言うとルルーシュは意味深げな微笑みを浮かべ、スザクの生温かい頬に左手を添える
「今夜は泊まってけ」
この世のものとは思えない深い紫玉に引き込まれる
「言われなくてもそうするつもりだよ」
スザクは素直に彼を受け止めていた
「ルルーシュ」
「なんだ?スザク」
ベッドの中で寄り添う二人
今日は誰にも気を使う必要がないからか、ルルーシュの表情も穏やかなのが見てとれる
「眠れないの?」
「ああ」
「じゃあルルーシュが眠れるまで、僕が手を握っててあげる」
「本当か?」
朧(おぼろ)げな表情でスザクを見つめるルルーシュ
「君に嘘はつかないよ」
スザクの翡翠の双眸に映る今のルルーシュは、触れてしまえばすぐに消えてしまいそうな儚さと脆さを持っていた
「…お言葉に甘えて頼むとしよう」
「安心して眠ってね」
そう言うとルルーシュは、普段は滅多に見せない安心仕切った無防備な顔を見せてくれる
「おやすみ、スザク」
自分にしか見せない反応がとても可愛くて、握る手に力が篭(こ)もる
「おやすみ…ルルーシュ」
怯えなくていい
怖がらなくていい
大丈夫
ルルーシュは僕が守るから
聞き取れないほどの小さな囁きが、ずっとルルーシュの耳たぶの裏側で聞こえていた――
まどろむ君に安息を
(何気ないその優しさが心を融かした)
お題拝借、ニルバーナ・ハマヒルガオ様