君のための嘘
□第十一話
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「おはよっ、 なまえちゃん! 」
朝、いつものようにカンナちゃんが隣の席に着く。
「おはよ、カンナちゃん。見たよー彼氏とラブラブ登校」
なんと、登校中に手を繋いで歩くカンナちゃんカップルを目撃したのだ。
「ええっ、見られてたの?恥ずかしい!」
ほんと、普通にしてたら可愛いのに。
「てゆーか、あの噂聞いた!?黄瀬くんが好きな子いるって!」
え、何それ知らない。
え、私…流行遅れ?
そんな噂、耳にしたことすらないわよ。
「その様子じゃ知らないみたいだね…。実は、最近黄瀬くんに告った女子はみんな、決まって“大切で仕方ない好きな子がいるんス”って言ってフラれてるらしいのよ!しかも、黄瀬くんの片想いなんだって!」
黄瀬くんの片想い!?
どうして黄瀬くんを好きにならないのよ!
どんだけ贅沢なの、その子!
黄瀬くんがそこまで惚れてるなんて、どんだけの美少女なわけ!?
気になる!
「あ、噂をすれば本人登場」
カンナちゃんの視線を辿れば、疲れたような顔をした黄瀬くん。
きっと、ここに来るまでに質問攻めを喰らったのだろう。
だが、私と目が合うとキラキラと目を輝かせてこっちに走ってきた。
「おはようッス! なまえっち!…と、カンナちゃん 」
「ちょっと!私、ついで?」
どうやら黄瀬ワンコになつかれたようだ。
「黄瀬くん!好きな子いるらしいじゃん!私、応援してるからね!片想いだからって諦めちゃダメだよ?」
私が握り拳を作って吐いた言葉に、黄瀬くんは瞳を揺らした。
また、あの悲しそうな顔。
「……そうッスね。相手は俺に見向きもしないッスけど」
何がそんなに苦しいの?
どうしてそんな顔するの?
ねぇ、
黄瀬くんは笑っててよ。
黄瀬くんの苦しそうな顔は、私まで苦しくなるよ。
感情が感染して、切なくなる。