欲張り少女は微笑んだ

□失った世界に一人
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ツラい。

痛い。

消えてしまいたい。




「死にたい」


屋上で寝転びながらハッキリと言葉にしてみると、思ったよりも現実味が増した。

私って生きてるんだ。

どうしてだろう。



私が何をしたって言うんだ。



「なんや、物騒なこと言う子やなぁ」


私以外にはいなかったはずの屋上に誰かが来たらしい。

閉じていた目を開くと、有名な今吉先輩とかいう人が私の顔を覗きこんでいた。

近くで見るとイケメンなんだ。

胡散臭そうだと思っていたことを心の中で謝っておく。



「後輩やろ?こんな人気のないとこで何してるんや?」


「…光合成」


「植物やないねんから」


ハハッと胡散臭そうに笑って私の隣に腰を下ろした今吉先輩。

なんで隣に?


「今にも死にそうな顔した可愛い後輩を放っとくほど薄情な男やない」


私の心を見透かしたように言葉を紡ぐ彼に、適当に返事をして視線を空へと移す。

変な人だな。

青峰くんも変だったな、そういえば。

バスケ部は変人の集まりなのか。



「…で?何があったんや?」


「……先輩には関係なくないですか?」


「ここまで来たら話してくれたってええやん」


「図々しいですね」


ズバッとくるなぁ、なんて笑ってる今吉先輩を一瞥して、この人になら言ってもいいかもしれないと思ってしまった。

…完全に先輩のペースだよ。

ま、いいけど。



「友達に、ハブられたんです。それだけです」


「あー、女子特有の…」


「ほんと、めんどくさいです。女やめたいです」


「ちょ、それはないやろ」


おもろい子やなー、とケラケラ笑う彼。

この人、さっきから笑いすぎじゃない?


「3人のグループって大体うまくいかないんですよ。ペア作れって言われたら1人余るし。…男子が羨ましい、下ネタしか言わないし」


「他のグループに入れてもらえばええんとちゃう?」


「今さら入れてもらえると思いますか?それに、気遣わせちゃって申し訳ないんです」


「…ええ子なんやな」


「…は?」


「ハブられてもその子らの悪口言わへんし、気遣わせるってことに気遣ってるやんか」



そんなこと、言われたことない…。


「ふっ……あははっ!」


「なんか変なこと言うたか?」


「ふふっ…、 いえ…初めて会った人にそんなこと言われるとは…」


ほんと変な人だな。

でも、そう言ってもらえてすごく嬉しい。



「やーっと笑ったな」


「え?」


「ずっと暗い顔して、せっかく可愛い顔してんのに勿体無いなー思っててん」


「……、っ」


サラッと「可愛い」と言われたことに、顔がだんだんと赤くなる。



「なぁ、携帯持ってるやろ?貸してくれへん?」


「え、あ…はい」


言われた通りに携帯を差し出すと、少し操作して私に返してきた。


「?」


「ツラくなったら連絡してくれれば、部活中以外なら相談受けるで。せやから、もう1人で抱え込むんは止め、な?」


「…先輩、」



携帯の画面には【今吉翔一】と電話帳に登録されたアドレスと番号。

胸にじんわりと温かいものが込み上げ、目頭が熱くなる。



「…苗字、名前です」


「ん?」


「私、苗字名前です…。先輩と、もっと仲良くしたいです…。それと、ありがとうございます」


笑って頭を軽く下げると、呆気に取られた顔をした今吉先輩が慌て始めた。


「いや、そんな頭下げんでも友達くらい…」


「友達じゃ、嫌です」


「はい?」


「友達じゃなくて、恋人から始めてくれませんか?」


「は、…?」



―――失った世界に一人。

あなただけは手を差し伸べてくれた。


(私、結構しつこいんで、覚悟してください)

(急展開すぎて着いていけへん…)

(とりあえずは、友達でいいです。“とりあえず”は)

(女って怖いねんな…)



おわり*


関西弁わからん(´・ω・`)
 

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