君のための嘘
□第二十四話
3ページ/4ページ
side.桃井
「今の話…本当なの…?」
女子生徒が去ったあと、俯いたままなまえちゃんが小さく私に問いかける。
「隠してたつもりはないんだけど…ごめん、なまえちゃん」
「んーん。桃ちゃんは悪くないから」
へにゃっと力無く笑うなまえちゃんに、なんて言葉をかけていいのかわからない。
「でもっ…なまえちゃんと幸せになれるなら言わない方がいいかもって思って…!」
言い訳に聞こえてしまうかもしれない。
それでも、なまえちゃんは笑っていた。
「いつか…こんな日がくると思ってた。いくら世界が変わったって、私が変わらなきゃ幸せになんてなれないもんね」
「世界が、変わった…?」
私にはなまえちゃんの言っている意味がわからなかった。
変わるとか、幸せだとか。
「あのね、私には両親がいないの。だからヒロたんにお世話してもらってるんだけど…。私だけ……助かったの。2人は死んじゃったのに」
虚ろな目で自嘲するように笑うなまえちゃんは、すごく狂気的に見えて身震いした。
「ずっと、誰かに愛されたかった…」
真っ直ぐに私を見据えるなまえちゃんが哀しそうに笑うから、私は何も言えなくなった。
「えへへ…こんな重い話、嫌だよね。ごめん… 」
「そんなことない!…なまえちゃん。もっと頼ってよ…」
私たち友達でしょ?
そう言って詰め寄ると、一瞬驚いた顔をしてまた泣きそうに笑った。
「ありがと…」
茉莉花のことは過去であってもう変えることのできない事実だけど、今の青峰くんにはなまえちゃんが必要だ。
なまえちゃんがいなくなったとき、また茉莉花のときのようなことが起こりそうで…少し怖い。
茉莉花のせいで青峰くんは悪い意味で変わったけれど、それを良い意味で変えたのは紛れもなくなまえちゃんだ。
お願いだから、大ちゃんの傍に居てあげて。