君のための嘘
□第二十一話
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「やだっ!何あの人!イケメン!」
「モデルのユウタの代理なんでしょ?ユウタよりかっこいいじゃん!」
「黄瀬くんの友達らしいよぉ!」
このように女子に騒がれているのは、言わずもがな私の彼氏。
彼氏が他の女の子にかっこいいと騒がれるのは、なんとも複雑な気分。
スタッフさんたちのところで座って見ててと黄瀬くんには言われたけど、本当にいいのかな…。
「あれ?なまえちゃん?」
「え?…あ!美希さん!」
私の黒歴史でもある、モデル代理の事件のときにお世話になった美希さん。
なぜここに?
「あの…美希さん、なんでここに?」
「そりゃあ、仕事よ?私、黄瀬涼太の専属スタイリストだもの」
「ええ!?そうだったんですか!?」
「そんなに意外?だって彼が、“美希さんなら下心なくスタイリングしてくれるから気が楽だ”って言うんだもん。そりゃあ、そんな褒められちゃ専属になるほかないじゃない?」
え、それ褒められてるの?
「と、こ、ろ、で!」
美希さんはニマァと口と目に弧を描いて、私に詰め寄る。
「もしかして、あのイケメンの男の子が例の好きな人?」
美希さんは怠げに撮影している青峰くんを顎で指す。
やはりその顔は楽しげに笑っている。
「……まぁ、お陰様で付き合うことになりまして」
「ええ!?付き合ってるの!?」
口に手を当ててる割に大きな声で驚く美希さんに、もう苦笑いしか出てこない。
「黄瀬くんが、背中を押してくれたんです。きっと、黄瀬くんがいなかったら、私は未だに告白できなかったと思うんです。だから、黄瀬くんには感謝してもしきれなくて…」
「…罪な子ね、なまえちゃんも。黄瀬くんの気持ち、知ってるんでしょう?」
「…はい、告白してくれました。こんなイイ男フるなんてって…でも、幸せになってほしいって、言ってくれたんです」
「ほんとよねぇー。あの子ほどイイ男はいないわよぉー。勿体無い」
でも、と続けた美希さんを見上げる。
「なまえちゃんが黄瀬くんよりも今の彼を選んだってことは、なまえちゃんにとっては彼の方がイイ男だったってことでしょ?なら、幸せになりなさい。幸せにしてもらいなさい」
いつもの天真爛漫な美希さんからは想像もできないほど真剣な表情に、私はしっかり頷く。