君のための嘘

□第十四話
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「ただいまー」





「遅い!」





真ちゃんに送ってもらって帰ってきた現在の時刻、19時半過ぎ。


そして、隣の家に住んでいるはずのヒロたんが私の家の玄関で、おたま片手に腕を組んでいる。



最近、ヒロたんは私の家に居座っている。



家事は全てヒロたんがやり、私が寝た頃になって自宅へと帰っていくのだ。







「ねぇ、ヒロたん。家事とか色々、自分でやるから大丈夫だよ?ヒロたんだって疲れてるでしょ?」






「俺がやりたくてやってんだからいいんだよ!てめぇは黙って飯食って風呂入って寝てろ!」






これが、きっとヒロたんなりの優しさなんだろーな。






「なぁ、 なまえ。 合宿っていつからだ?」





今日の夜ご飯を食べる私の前で頬杖をつきながら問いかけてくるヒロたん。





「んー、明後日」





肉じゃがのジャガイモを頬張りながら答えると、ヒロたんはガタッと立ち上がった。





「おまっ、言うの遅ぇよ!準備はどーすんだ!」






「えーだって、着替えとお風呂用具とその他諸々でしょ?家にあるやつ持ってくよ」






「何言ってんだ!水着と浴衣と可愛い下着とか買わなきゃだろ!?」






「え、いや……なんで?」






「合宿って海でだろ!?もちろん水着は必須だし、夏と言えば夏祭り!当然そこら辺で夏祭りやってんだろ!それには浴衣必要だし、もしも男子に風呂場覗かれたとき用の可愛い下着だろ!」






すごい形相で捲し立てるヒロたんに、私はポカーンと口を開く。






「いや……合宿だし、水着はまだいいとして、夏祭りなんて行ってる暇なんてないだろうし、風呂場覗くなんて、ないでしょ」






「バカか!実際に行くときになってから浴衣ありません、とかなってみろ!男子ガッカリだろ!男心わかってやれよ!」







「誰も私の浴衣姿見て喜ばないから大丈夫」






「ぜってぇ緑間とか喜ぶから!あいつムッツリだから喜ぶから!あと赤司も!あいつお前のこと気に入ってるから誉めてくれるって!な!?」






なんでヒロたんがそこまで張り切ってんだろ…。






「……荷物になるから要らないよ。ご馳走さま」






食べ終わった食器を台所にさげてから風呂用具を持って風呂場に向かう。




後ろでヒロたんが何やら叫んでるが、無視する。






















「……ふぅ」





湯船に浸かり、一息吐くと、疲れが飛んでいった気になる。




1人になると、途端に考えてしまうのは青峰くんのこと。




どうしたら、私のことを見てくれるんだろう。



どうしたら……





「あー、もう!やだ!めんどくさい!なるようになれ!」





湯船から勢いよく出ると、バシャンッと水が跳ね上がる。




本宮サンのことも、合宿中にどうにかしよう!





いくら考えても答えには辿り着けなくて、それならもう、後先のことを考えるのはやめた。






私には、黄瀬くんや真ちゃんみたいな頼もしい味方がいる。



それだけで、充分だ。








つづく*
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