君のための嘘
□第十四話
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「暇なのだよ」
「真似をするな」
部活終了後。
いつものように自主練をする真ちゃんの様子を見ながら、真ちゃんの口癖を語尾につけてみたら、案の定睨まれた。
「暇なら帰ればいいだろう。わざわざ暇になるまでここにいる必要はないのだよ」
「いや、暇だけど暇じゃないってゆうか……真ちゃんのシュートが見たいだけ」
だって、あんな綺麗なシュート、貴重じゃん?
「……フンッ、好きにするのだよ」
出たよ、ツンデレ。
かわいいなぁー、ほんと。
「ねぇ、真ちゃん」
「なんだ」
シュートを打つ体勢を作りながら私に言葉を返す真ちゃん。
「彼女いるー?」
顔を真っ赤にして、動揺してシュート外すだろうなぁ、と思っていたが、そうではなかった。
平然とボールを撃って、メガネのブリッジを上げる。
「そんなもの、必要ないのだよ。今はバスケだけでいい」
なんとも真ちゃんらしい。
「そっかぁー。いいな、そんな1つに熱中できるものがあって」
今の私は、この地球上に必要か必要じゃないかで区別されれば、即答で必要ないに分けられるだろう。
「お前は青峰のことで手いっぱいなのだろう。見ていればわかる」
「し、真ちゃんにまでバレてんの!?」
まさか、青峰くんにも気付かれてる…?
「安心しろ。青峰は気付いていない。……それにしても、本宮蜜希。あいつは好かん」
眉を寄せ、不機嫌そうに呟いた真ちゃんに首を傾げる。
「意外だね。どうして?」
「どうしたもこうしたもない。あいつは仕事をしないだろう。青峰の後を金魚のフンのように着いていって、正直腹立たしいのだよ」
まあ、仕事なんてしてないも等しいからね。
「…お前は、よく頑張っている」
「えっ…?」
「マネージャー業は人一倍 頑張っているだろう。熱中出来ているんじゃないのか?」
「……そっ、か…。私、今楽しいよ。…これ、熱中出来てるってことなんだ…」
なんだ、私、ちゃんと頑張れてんじゃん…。
「あまり自分を卑下していると、何事にも負けやすくなるのだよ。本宮のことも」
真ちゃん……気遣ってくれてる?
「…ありがと」
「…フンッ」
真ちゃんはまたメガネのブリッジを上げると、ボールを片し始めた。
「もう帰るの?」
「お前を送るためには早めに切り上げなければならないだろう。さっさと準備をしろ」
え、送ってくれるんだ…?
「真ちゃん!ありがと!」
さっきよりも大きく、心を込めて叫ぶと、「うるさいのだよ」と怒られた。
でも、その耳が真っ赤だったから全然怖くなかったけど。