君のための嘘
□第十一話
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黄瀬くんのあの表情が頭から離れず、ゲームのスコアを記録しながらもどうしても考えてしまう。
もしかしたら黄瀬くんは、相当ツラい恋をしてるのかもしれない。
私みたいに、ライバルがいてモヤモヤしてるのかもしれない。
それなら、気持ちのわかる私は相談でも何でも聞いてあげた方がいいのかもしてれない。
そんなこんなで、今スコアを記録していたゲームは終わり、私はファイルを閉じる。
次はドリンク作りでもしようかな…。
桃ちゃんはデータを採っているし、本宮サンはそもそも仕事をしてくれない。
何度か注意はした。
“青峰くんにくっついてばかりいないで、ちゃんとマネージャーの仕事してくれる?”
そう言った私に煩わしそうな視線を寄越して、“はいはい”と面倒くさそうに適当な返事をされたのを覚えている。
それでも本宮サンは青峰くんから離れないし、タオルやドリンクを渡すのも青峰くんにだけ。
仕事をしないのであればマネージャーなんて呼ばれる資格などないのだから、さっさと辞めてほしいものだ。
所詮、彼女もミーハーなそこらの女子と変わらないのだろう。
「少し休憩をとる。各自、水分補給をしておけ」
赤司くんの声にハッとして、ドリンクを作っていないことに気付く。
ボトルを探している部員に駆け寄り、思いきり頭を下げる。
「ごめんなさい!まだドリンク作ってないんです…本当にすみませんっ」
「いやいや、大丈夫だよ。さっきまでスコア記録してたんだから、そんなすぐにドリンク作れるわけないもんな」
「 みょうじさんだって忙しかったんだろ?…つーか、本宮さんが働かなさすぎだろ。青峰ばっかにくっついてよ」
フォローしてくれる部員にホッとしながら、ふと出てきた名前に反応する。
「一応、注意はしたんですけど、返事だけはしてなかなか直してくれないんですよ…」
「桃井さんはデータ、 みょうじさんは皆が嫌がる雑務までやってくれてんのに、アイツはな… 」
「とりあえず、今日のドリンクは自分で作るから、たまにはマネージャーも休んでこいよ!」
「えっ、でも…皆さんもお疲れでしょうし私がドリンクを…」
「いいから、いいから!倒れられたりしたら、マジ心配だしっ」
なんでこんなに良い人たちなんだろう、この高校の人は。
「じゃあ……お言葉に甘えて…」
私はスコアの記録されたファイルをベンチに置いて、しばらく休むことにさせてもらった。