君のための嘘
□第四話
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「ふぁ……」
充分な睡眠をとったはずなのに、まだ疲れがとれないのか、大きな欠伸が出る。
「でけぇ口だな」
私の隣を歩くヒロたんにそう言われ、慌てて口を押さえる。
「しょうがないじゃん…。眠いんだもん」
「まぁ、どうでもいいけど、マネージャーの仕事だけはしっかりやれよ。仮にもお前は俺のイトコなんだからな」
どこまでも俺様な奴だな…。
「なまえちゃん?」
可愛らしい声に名前を呼ばれ、ん?と振り返ると、目を見開いた桃ちゃん。
「あっ!桃ちゃん!」
朝から会えたことに感激して、私は桃ちゃんに抱きつく。
「おはよぉ、桃ちゃん!」
「おはよう、 なまえちゃん。まさか通学路が一緒だとは思わなかったよぉ 」
ああ、桃ちゃんいい匂いがする…。
そんなこと考えながらポワポワと目を閉じて桃ちゃんを堪能していると、私に影ができたような気がして目を開ける。
目を上に向けると、予想もしていなかった人物に大きく目を開く。
あ、青峰くん…!?
心の準備ができていなかった私の顔は一瞬で紅潮する。
「おい、さつき。友達か?」
半ば脱力しながら桃ちゃんに抱きついていた私を支えながら、桃ちゃんは青峰くんの方へ振り返る。
「うん。大ちゃ……青峰くんがストバスしてるときに仲良くなったの。 みょうじ なまえ ちゃんだよ」
桃ちゃんがそう紹介すると、青峰くんの視線は桃ちゃんから私に移動する。
「っ……はじめまして」
自分でもわかるほど顔が熱くて、私は自然と俯いていた。
間近で見る青峰くん、かっこよすぎて直視できないっ!
それを悟ったような顔をしたヒロたんの顔が視界の端に映っている。
「も、桃ちゃん!遅刻しちゃうから先に行くね…!…行こっ、ヒロたん!」
早口にそう言って、ヒロたんの腕を強引に引っ張っていく。
「…いいのか?あんな態度で」
引っ張られながら私を見上げるヒロたんに、私はまだ真っ赤な顔で睨む。
「緊張すると口下手になるから仕方ないでしょっ」