& ターレス
□夏の策略
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肝試しの後にダイーズを捕まえて問い詰めたところ、いきなりバーダックにこづかれながら順番変更を命令されたと言う。
(――何なんだ?)
ターレスの頭はクエスチョンマークで真っ黒だ。
本人に直接問うのも躊躇われ、その戸惑いからふと気付けばバーダックを見てしまう。
練習中も…試合中も…
おかげでサッパリ部活に身が入らない―――
真意を聞けぬまままたこの季節になってしまったのだった。
今年は墓地ではないと聞きターレスはホッと胸を撫で下ろしていたのだが、肝試しは肝試し……
「今年は学校で、ってのどうだ?」
「――学校!?」
「夜の校舎一周。とか。」
それはそれは楽しそうにカカロットが提案してきた。採決権のある横暴主将が、ふ〜ん と眉を寄せて少し考える。
「夜の校舎だと忍び込む…って事になるか?」
冷静に確認をとるトーマ。それぞれに顔を見合わせた。教師にバレれば面倒なことになるのは必然。
「部活上がりならできんじゃねぇの?」
不意にのらくらとした物言いでバーダックが呟けば、それで決定―――
遅くまで練習した日の後、着替えてから校舎で肝試し……今年の開催が決まった。
それでは と順番決めになるのだが、ここでまた主将権限の登場だ。
1年が先陣切るのは当然のごとく決定し、それに続いて学年ごとに……と思っていたターレスが待ったの声をあげた。
「…俺を最後にしてくれ。」
去年のように不様な様を曝さないように――とのせめてもの抵抗。
そんなターレスに、バーダックはニヤリとしながら頷いた。
「ククッ――元からそのつもりだった。」
昇降口からスタートし、プールを通って校舎を回る。部室がゴール――
(普段通っている学校の廊下だ。ここならそんなに――)
薄暗い廊下を歩きながら、ターレスが思うのはもはや別のこと。
つい目で追い掛けてしまうあの男……
自分はおかしくなってしまったのかと自嘲する。
これは明らかに好意を持っている、そう自身で気付いたのはいつからか――
動くたびに躍動する筋肉にそっと触れてみたい、と感情が暴れ出しそうになったのはいつからか――
深いため息はまさに募る想いのソレ。
ゆっくりとプールに着いて目に入る、練習後の静まり返る水面。
先程まで泳いでいた…何を考えているのかよく分からない男を…また思い出す。
まだ濡れているプールサイド。誰かが忘れたのか、青いタオルが落ちているのを見つけてターレスはドキリとした。
取り敢えず端に掛けておくか、と歩み寄った……その時―――
グイッ!!
何かに思いっきり足を引っ張られ―――
「―――――!」
声をあげる間もなく――
ドボーーン!!
激しい水しぶきを上げ、そのままプールに引きずり込まれてしまった。