& ターレス

□夏の策略
2ページ/3ページ





肝試しの後にダイーズを捕まえて問い詰めたところ、いきなりバーダックにこづかれながら順番変更を命令されたと言う。


(――何なんだ?)



ターレスの頭はクエスチョンマークで真っ黒だ。


本人に直接問うのも躊躇われ、その戸惑いからふと気付けばバーダックを見てしまう。
練習中も…試合中も…

おかげでサッパリ部活に身が入らない―――

真意を聞けぬまままたこの季節になってしまったのだった。








今年は墓地ではないと聞きターレスはホッと胸を撫で下ろしていたのだが、肝試しは肝試し……


「今年は学校で、ってのどうだ?」
「――学校!?」
「夜の校舎一周。とか。」


それはそれは楽しそうにカカロットが提案してきた。採決権のある横暴主将が、ふ〜ん と眉を寄せて少し考える。


「夜の校舎だと忍び込む…って事になるか?」


冷静に確認をとるトーマ。それぞれに顔を見合わせた。教師にバレれば面倒なことになるのは必然。


「部活上がりならできんじゃねぇの?」


不意にのらくらとした物言いでバーダックが呟けば、それで決定―――

遅くまで練習した日の後、着替えてから校舎で肝試し……今年の開催が決まった。

それでは と順番決めになるのだが、ここでまた主将権限の登場だ。


1年が先陣切るのは当然のごとく決定し、それに続いて学年ごとに……と思っていたターレスが待ったの声をあげた。


「…俺を最後にしてくれ。」


去年のように不様な様を曝さないように――とのせめてもの抵抗。
そんなターレスに、バーダックはニヤリとしながら頷いた。


「ククッ――元からそのつもりだった。」













昇降口からスタートし、プールを通って校舎を回る。部室がゴール――


(普段通っている学校の廊下だ。ここならそんなに――)


薄暗い廊下を歩きながら、ターレスが思うのはもはや別のこと。

つい目で追い掛けてしまうあの男……
自分はおかしくなってしまったのかと自嘲する。
これは明らかに好意を持っている、そう自身で気付いたのはいつからか――

動くたびに躍動する筋肉にそっと触れてみたい、と感情が暴れ出しそうになったのはいつからか――


深いため息はまさに募る想いのソレ。


ゆっくりとプールに着いて目に入る、練習後の静まり返る水面。

先程まで泳いでいた…何を考えているのかよく分からない男を…また思い出す。



まだ濡れているプールサイド。誰かが忘れたのか、青いタオルが落ちているのを見つけてターレスはドキリとした。

取り敢えず端に掛けておくか、と歩み寄った……その時―――




グイッ!!



何かに思いっきり足を引っ張られ―――



「―――――!」


声をあげる間もなく――




ドボーーン!!



激しい水しぶきを上げ、そのままプールに引きずり込まれてしまった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ