小説

□そして
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翌日のポッド発着場には、まるでピクニックにでも行こうとしてるかのように陽気な集団が「じゃあな」と声掛け合いながらそれぞれに別れて出発して行った。


やがて辿り着いた小さめの星の主要都市近郊―――
巨大な傘のように大きく枝を伸ばした木が都市を見下ろし包み込むようにして聳えているのが、なだらかな地平線の先にポツンと存在していた。
生い茂る緑は鮮やかで美しいものの、他にこれといった植物は見当たらない。ゴロゴロとした未開発な地のような荒れた大地が土の色を剥き出しに、乾いた風にサラサラとその砂粒を転がしていた。

何故フリーザがこのような星を欲しがると言うのだろうか―――

皆に僅かに浮かぶ疑問は、どうせくだらない理由の1つであろうと直ぐに呆れに変わる。
自分達サイヤ人は暴れられて、フリーザにしては楽に目的ブツを獲られる。成り立っているそんな関係に詮索は不要だ。


幾つものクレーターを生んだポッドから、各々がジャリっと細かな粒子を踏み締めて足をおろした。身体を完全に伸ばしきるより早々、窪みの淵から中に向かって、現れた先住民が四方八方から攻撃を仕掛けてきた。有無を言わさぬ集中放火に彼等の強い敵対心を見、侵略者たるサイヤ人はほくそ笑む。

避ける迄もない脆弱な弾を全身に浴びながら、いの一番に地を蹴ったのはやはりバーダックだった。

続いてトーマとセリパが左右に走り出し、嬉々とした気を高めてターレスも上空に飛んだ。トテッポ達は後方に飛び退き様に数人を蹴散らし、そのまま土煙に消えていった。

高い位置から状況を把握したターレスは最も敵の集まっている場所を確認し、ニヤリと口角を持ち上げると手の平にエネルギーを集中させ始めた。

最前線に飛び込んでいったバーダックは、先住民の目には見えぬ早さで次々と着実にその数を減らして行く。鳩尾から抉り上げ弾き飛ばし次の敵には背後からの重い蹴りを見舞う。無数に襲い来るエネルギー弾を周囲に爆発させたオーラでかき消し、バーダックの周りに集まっていた敵もろともを吹き飛ばした。
乱れぬ呼吸のまま口端に弧を描き、あちこちで同様な戦闘音が轟いているのを僅かに頭の隅で捉える。

しかし今高揚感に支配されている戦闘民族の昂き血は、それ以降の仲間の詳細などシャットアウトで本能のままに己の欲を解放させていた。


そんな中で、空が輝いたのは、一瞬だった。


異星人にはそれがエネルギー弾だと理解する事も出来ぬ早さで、軍を指揮していた陣営に降り注ぐ――――

巨大にまばゆい光体に眼を細めて見上げ、廂を作るように片手を持ち上げる一連の動作が終えるより前に、彼等の運命は最期を迎えていた。

前方バーダックのその数十メートル先で炸裂した気弾が地と飲み込むように異星人を食らい、轟音と爆風を生んで周囲にも襲い掛かった。衝撃破に吹き飛ばされ倒れ行く敵をクスクスと笑むターレスは高見から楽しんでいるが、その肩は乱れた呼吸で上下していた。
溜めた力を放った後の疲労感に滲む汗を拭う。


「―――っ何しやがる!クソガキっっ!!」


僅か一瞬の事態だったが、衝撃を身構えた態勢で迎えたバーダックは踏み留まっており、辺り一帯が綺麗に一掃されてしまった大地に一人怒りのままにたたずんでいた。

光原の先に浮いていたターレスに青筋立てて振り返ったバーダックが、散り始めた爆煙の向こう側にいる根源を睨み叫ぶ。


「早い者勝ち理論を全うしたまでだぜ?」
「この俺の獲物を狩るたぁいい度胸してんじゃねぇか!あ"ぁ!?」
「――――!!」


威嚇を残して、


バーダックが消えた。




ドカッ!




ターレスが次に状況を理解出来たのは、背を襲う激痛と、物凄い速さで距離を縮めている地面とのスレスレの墜落間際だった――――








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