小説

□こんなのもアリ?
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ポカポカと暖かい新緑の季節。
今日も親子三人開けた大地で修行……なのだが、やはり力不足の長男は体力が追い付かない。

すごすご帰ってゆく兄に見向きもせず、父とぶつかり合う悟空。

「兄ちゃんちっともやる気ないよなぁ」

「アホ。てめぇの戦闘力考えやがれ!ラディなんかデコピンで死ぬぞ。」

「オラちゃんと手加減してんぞ?父ちゃんも分かんだろ!」

空中で拳をくりだしあい、避けあいながらチラリと長男を見、ため息をもらす。

「分かってっから、アイツも気が乗らねぇんだろよ。悟飯との組み手の方が均衡とれてやりやすいだろう、ぜっ」

次男からの蹴りを背を反らし避けながら、間合いを詰めて顎を狙う。
悟空はその拳を受け止め、バシッと重い音を響かせる。
「いってぇ〜。容赦なく急所狙うよな父ちゃんは… 超化してねー時はたまにヒヤッとすんぞ!」

手の平をぶるぶるさせ眉を下げる息子を見て、バーダックは苦笑いする。

「実践経験の差だ。常に生死がかかってんだ。一撃必殺……だろ?」

遊び半分の組み手でつい狙ってしまうのはやはり、余裕が無いからだろうな…

次男との力の差が開いてしまってる今、負けてたまるか!のプライドと言うか負けず嫌い根性でぶつかっているバーダック。
ちっと舌打ち急降下して地に降り立つ。それに悟空も続いた。

「ちっと休憩だ。」

どかっと岩に座り込み、懐からタバコを取り出す。チチに見つかると煩く言われて面倒なので、専らこういう時に吸うのみだ。
そんな父を見つめ、悟空はふと思った。

「父ちゃん今いくつなんだ?」

「あ”ぁ?!っんだ急に?」
すっとんきょうな息子の質問に眉間に皺が寄る。悟空もゴロゴロする砂利地に直接腰を降ろし、童顔な顔をキョトンとさせた。そしてタバコを指差す。

「それ大人が吸うってやつだろ?チチに聞いたぞ。でもオラはダメだって言われたんだ。ってことはオラは大人じゃないってこったろ?似たような見た目だけど、父ちゃんは大人なんか??」

バーダックは頭痛がしそうでこめかみを押さえた。

(またか…)

こんな感じで質問されるのがしょっちゅうだ。
自分か長男にとぼけた(本気で分からないんだろうが…)顔で尋ねてくる。

(こいつを教育した地球人に会ってみたいぜ……)

サイヤ人についての質問には寛容に答えられた。暮らしたことない星のことだ。気が乗れば長々と話もしてやった(主にラディが)。

しかし一般常識については、正直あきれていた。面倒臭いとも思っている。
盛大にため息しながらバーダックは片手で顔を覆った。

「……オレが死んだのは30くらいだ。そっから歳はとってねぇ。てめぇと同じような歳だろ?」

「おぉ!そうなんか?
あれ?でもそれじゃあ30が大人なんか??」

「そうなんじゃねーの?」

煙をふぅっと青空に吐き出しながら適当に相槌をうった。
この場に長男がいれば全力でツッコミを入れてくれるのだろうが、残念。

「ふ〜ん。そうなんかぁ」

青空に消えていく薄い煙を目で追いながら、こちらも適当な返事をもらした。


その後、腹の虫が知らせるまで暴れ回った二人は、並んで家路を歩く。
飛べばすぐなのだが、たまに出くわす動物を捕獲する楽しみもある、と足を使うのが常だ。

少し先から夕飯のいい匂いが漂ってくる。

「お!今日のメシも旨そうだな!」

「てめぇはいつも同じ事言ってるぞカカ。」

何気に捕まえていた巨大な豚を担ぎながら走りだした次男を、あきれ声で追うバーダック。

戸を開けると嫁や孫、ウザッタイ髪を束ねて着席している長男を見つけ、小さな笑みをこぼした。

(悪くはない。)

戦闘のない生活なんて退屈なだけだと思っていた。

家族など、ただの繁殖の結果で赤の他人と変わらない――
―――そう、思っていた。


ところがどうだ。
地獄から生き返り、こうして地球式の『家族』をしていると、退屈だと思った日々にまんざらでもない感情がわく。

これはこれで楽しみがあるのかもしれないと思えてくる。
そんな感情的な会話などしないがきっとラディもそうなんだろうな…と最近気付いた。

義理の妹にサイヤ人の料理を教えていたり、甥っ子に惑星について話していたり……

穏やかに笑っている顔が増えた。

(不思議なもんだな
これも地獄で魂を洗われてた影響なのか……?)

食卓についたバーダックはフッと笑う。
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